Review Article
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療法
Nature Reviews Drug Discovery 22, 11 doi: 10.1038/s41573-023-00775-6
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は単一遺伝子性筋消耗性疾患の1つで、分子治療と細胞治療の対象疾患候補としての重要度が高い。DMDは希少疾患だが、小児が発症する遺伝性筋疾患の中で最も一般的なものであるため、これまで精力的な研究活動の焦点となってきた。DMDの原因は、タンパク質「ジストロフィン」の産生を阻害する変異である。現在、ジストロフィンの機能回復を目的とした新薬開発の取り組みが数多く進められており、その中には、エキソンスキッピング、終止コドン読み飛ばし、遺伝子置換、細胞治療と遺伝子編集が含まれている。こうした取り組みにより、4種のエキソンスキッピングアンチセンスオリゴヌクレオチド、1種の終止コドンリードスルー薬と1種の遺伝子治療製品が臨床承認され、この他にも臨床承認が近いうちに行われる可能性が高い。本総説では、DMD治療のために開発中あるいは現在採用されている最新の治療戦略について論じる。これらの医薬品開発プログラムからの教訓は、DMDの分野だけでなく、より一般的に分子細胞医学にも大きな影響を与える可能性が高い。そのため、DMDは今後の創薬活動の最前線に位置付けられる先駆的な疾患であり、上記の実験的治療法は、同様の作用機構を用いて他の遺伝性疾患を治療する方法の開発に道を開いている。