Review Article
ヒト遺伝学を利用して治療薬の安全性評価を改善する
Nature Reviews Drug Discovery 22, 2 doi: 10.1038/s41573-022-00561-w
ヒト遺伝学研究は、複合疾患や希少疾患に関連する数千種のタンパク質の発見をもたらし、ゲノムワイド関連解析(GWAS)とメンデル遺伝病の研究によってヒト疾患における遺伝子の機能と制御の役割に関する理解が進んだ。ヒト遺伝学の応用は、主として薬剤標的候補を同定し、それがヒト疾患に関係していることを裏付ける方法として探求されてきたが、特定の標的分子を修飾することに伴って生じる可能性のある安全性の問題を遺伝的データの利用によって見つけ出すことに関心が高まっている。ヒトの遺伝的バリアントは、生涯にわたる治療標的の修飾の影響を予測し、オンターゲット効果としての有害事象が生じる潜在的リスクを同定するためのモデルとして利用できる。この手法は、薬理学的に適切な動物モデルのない新規治療薬の非臨床安全性評価に特に有用で、薬剤標的の固有の安全性プロファイルに寄与する場合がある。本総説では、創薬及び医薬品開発における安全性研究へのヒト遺伝学の応用を解説する。その例としては、オンターゲットやオフターゲットに関連した有害事象可能性の評価、がん原性リスク評価、トランスレーショナル安全性研究の計画やモニタリング戦略にとっての指針を提供することなどがある。また、利用可能なヒト遺伝資源と推奨されるベストプラクティスを概説する。そして、前臨床開発段階と臨床開発段階においてヒト遺伝情報のトランスレーションを実施して薬物効果の可能性によるリスクを同定することに関して、課題と将来展望を考察する。