Review Article
COVID-19の治療戦略:進捗状況と教訓
Nature Reviews Drug Discovery 22, 6 doi: 10.1038/s41573-023-00672-y
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とヒトタンパク質の一方または両方を標的として、ウイルス感染を制御する治療戦略を構築する非常に大掛かりな取り組みを促進し、数百点の薬剤候補が登場し、数千人の患者が参加する臨床試験が実施された。これまでのところ、わずかな種類の低分子抗ウイルス薬(ニルマトレルビル-リトナビル、レムデシビル、モルヌピラビル)と11種類のモノクローナル抗体が、COVID-19の治療薬として上市され、そのほとんどは、症状発現後10日以内に投与する必要がある。また、重症/重篤COVID-19の入院患者は、既に承認されている免疫調節薬による治療で効果が得られる可能性がある。例えば、デキサメタゾンなどのグルココルチコイド、トシリズマブなどのサイトカイン拮抗薬、バリシチニブなどのヤヌスキナーゼ阻害薬である。本総説では、このパンデミックの発生以降に蓄積された知見と抗コロナウイルス活性を有する臨床用阻害剤と前臨床用阻害剤の包括的なリストに基づいてCOVID-19創薬の進捗状況を概説する。そして、COVID-19、COVID-19後遺症(long COVID)や今後の病原性コロナウイルスのアウトブレイク(集団発生)に対処する治療薬の開発のためのドラッグ・リパーパシング戦略、汎コロナウイルス薬の標的、in vitroアッセイと動物モデル、プラットフォーム試験のデザインに関して、COVID-19や他の感染症から学んだ教訓を論じる。