Perspective
抗ウイルス薬の創薬を加速させる:COVID-19の教訓
Nature Reviews Drug Discovery 22, 7 doi: 10.1038/s41573-023-00692-8
2019年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の際、学界と産業界で迅速かつ協調的な創薬研究の波が起こり、2年間で数種類の医薬品が創薬、承認、展開された。本論文では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス薬の創薬を積極的に進めた複数の製薬会社と学術連携の集団経験を概説する。そして、低分子創薬過程の主要な段階である標的選択、医薬品の化学分析、抗ウイルスアッセイ、動物有効性試験と薬剤耐性を防止する試みに関する我々の意見と経験の概要を示す。我々は、将来の創薬研究を加速させる可能性のある戦略を提案すると同時に、創薬の出発点の1つになると考えられる「十分に研究されていないウイルス標的に対する質の高い化学プローブ」の欠落が重大な支障の1つになっていると主張する。ウイルスプロテオームのサイズが小さいことを考慮すれば、パンデミックが懸念されるウイルスのタンパク質に対するプローブを包括的に構築することは、科学界にとって有意義で、扱いやすい課題と言える。