Review Article
RNA標的医薬による遺伝子発現の増幅
Nature Reviews Drug Discovery 22, 7 doi: 10.1038/s41573-023-00704-7
多くの疾患は、変異した遺伝子の発現不全に起因しており、対応するタンパク質の発現を増加させることが有用と考えられる。しかし、これまでの医薬品開発では、阻害作用や拮抗作用を有する医薬品を開発する方が容易だった。タンパク質置換療法と遺伝子治療は、タンパク質発現の増加という目標を達成できるが、限界がある。最近になって、非コードRNAによって形成される数々の広範な調節ネットワークが発見され、これまでと異なる標的や戦略によって特定のタンパク質の産生を増幅する道が開かれた。現在、RNAを標的とする低分子医薬に加えて、RNAによる調節ネットワークを高い特異性で修飾できる新しい核酸医薬の開発が進められている。これらの手法では、mRNAの安定性を直接の標的とすることや、非コードRNAを介した転写と翻訳の調節を修飾することができる。本総説では、遺伝子活性化のための新たなRNA標的医薬を取り上げ、臨床応用の機会と課題を重点的に論じる。