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がん治療薬としての抗体薬物複合体が成熟期を迎える

Nature Reviews Drug Discovery 22, 8 doi: 10.1038/s41573-023-00709-2

抗体薬物複合体(ADC)は、モノクローナル抗体の特異性と細胞毒性の強い薬物の有効性を兼ね備えており、この薬物を腫瘍部位に選択的に送達することで副作用の重症度を軽減できる可能性がある。ADCは、他の薬剤、例えば第1選択の抗がん剤などと併用投与されることが増えている。このように複雑な治療薬であるADCの製造技術が成熟したため、承認薬としてのADCも後期臨床試験段階にあるADCも大きく増えている。また、ADCの標的抗原もADCが輸送する生物活性薬物も多様化しており、ADCが適応となる腫瘍の範囲が急速に広がっている。さらに、新しい様式の薬物-タンパク質複合体に関する研究やADCによって腫瘍微小環境に放出する新規薬物の研究も進められており、ADCの腫瘍内分布や活性が改善され、その結果として、治療困難なタイプの腫瘍に対するADCの抗がん活性が高められることが期待される。しかし、こうした薬物の開発においては、毒性が依然として重要な問題点であり、ADCのさらなる最適化のためにはADC関連の毒性に関する理解を深め、毒性の管理を向上させることが欠かせない。本総説では、がん治療に用いるADCの開発に関して、最近の進展と課題を大まかに概観する。

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