NLRP3インフラマソームを標的とした薬剤開発:シグナル伝達機構が治療標的に
Nature Reviews Drug Discovery 23, 1 doi: 10.1038/s41573-023-00822-2
慢性炎症関連疾患は、世界中で大きな健康負荷となっている。インフラマソーム、特にNLRP3(NACHT, LRR and PYD domain-containing protein 3)インフラマソームは、感染症と組織損傷に対する炎症反応の中心的な促進要因として、多種多様なリウマチ性疾患、代謝性疾患と神経変性疾患における非常に重要な調節因子であることが明らかになってきた。NLRP3は、他のインフラマソームセンサーと同様に、細胞質内に自然免疫複合体を形成し、この複合体がシステインプロテアーゼの一種であるカスパーゼ-1を活性化する。カスパーゼ-1は、ガスダーミンD(GSDMD)を切断して、制御された溶解細胞死であるピロトーシスを誘導する。ピロトーシスは炎症性が高く、その理由の1つは、インフラマソーム依存性サイトカインであるIL-1βおよびIL-18とともにその他多数の危険信号および細胞内抗原が同時に細胞外に放出されることにある。本総説では、NLRP3ならびにインフラマソームの下流エフェクターであるGSDMD、ASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD)およびNINJ1(nerve injury-induced protein 1)が、治療標的として大いに認められ、受け入れられるようになるまでの過程を考察する。我々はまた、臨床現場で使用されるようになって、NLRP3インフラマソームの調節という幅広い治療可能性を利用するために役立っている低分子阻害剤および生物学的阻害剤の開発における最近の進展も明らかにする。