がん治療のための二重特異性抗体の現在と将来

二重特異性抗体（bsAb）は、従来のIgG型抗体を用いて実現できない新しい作用機序および治療応用のいずれか一方又は両方を可能にする。そのため、bsAbの開発は過去10年間にかなりの関心を集め、2023年末現在、14種類のbsAbが承認されている。そのうち11種類ががん治療、3種類が非腫瘍学的適応のための抗体である。さまざまな様式のbsAbが取得可能で、それぞれ異なる標的に作用し、異なる分子機構によって抗がん機能を仲介する。本論文では、がん治療のためのbsAbの分野における最近の進展を概説し、既に承認されたbsAb又は臨床開発中のbsAbを重点的に取り上げる。例えば、bsAbによるシグナル伝達経路の二重調節、腫瘍を標的とした受容体アゴニスト、bsAb-薬物複合体、二重特異性T細胞、ナチュラルキラー細胞エンゲージャーおよび自然免疫細胞エンゲージャー、並びに二重特異性チェックポイント阻害薬および共刺激分子である。そして我々は、しめくくりとして、三重特異性抗体、bsAbプロドラッグ、標的腫瘍の分解を誘導するbsAbおよびサイトカイン模倣薬として作用するbsAbなど、開発の初期段階にある次世代bsAbの今後を展望する。