考古学遺跡で見つかった重金属汚染の最古の証拠
Earliest evidence of pollution by heavy metals in archaeological sites
2015年9月21日 Scientific Reports 5 : 14252 doi: 10.1038/srep14252
ヒト属(Homo)の人類種は、洞窟に居住し始めたときに新しい生物地球化学的環境に曝された。今回私たちは、イベリア半島にある有名な4つの考古学遺跡の洞窟で重金属に関する地球化学的分析を行い、この数百万年にわたる人類進化の中で古代に重金属による汚染があったことを示す初めての証拠を得たので報告する。洞窟という制限された環境内で自然要因(グアノ堆積物)や人為的要因(燃焼など)があったため、重金属の含有量は高い値に達していた。この人為的起源の最古の汚染を示す証拠は、ゴーラム洞窟(ジブラルタル)で見つかったネアンデルタール人の炉跡と考えられ、いわゆる「人新世(Anthropocene)」における最初の画期的な出来事の1つとなる。これらの堆積物は、その重金属濃度に従うと、現代の「汚染された土壌」の基準に当てはまる。ゴーラム洞窟とともにジブラルタルのバンガード洞窟も、亜鉛や銅による汚染が高度に人為的なレベルで至る所に見られることから、これらの元素は人類活動の指標になると考えられる。また、エル・ピルレホ遺跡のマグダレニアン期や青銅器時代の層準の亜鉛濃度も同様に解釈できる。こうした高い汚染度にもかかわらず、汚染された土壌はヒト属人類集団に大きな脅威を与えなかった可能性がある。総合すると今回のデータは、ヒト属人類が、たき火や煙とそれらの灰を介して長期間これらの元素に曝されたことを示している。この種の曝露は、環境汚染への耐性に一定の役割を果たしてきたと考えられるが、こうした影響はこれまで見過ごされてきた。
Guadalupe Monge, Francisco J. Jimenez-Espejo, Antonio García-Alix, Francisca Martínez-Ruiz, Nadine Mattielli, Clive Finlayson, Naohiko Ohkouchi, Miguel Cortés Sánchez, Jose María Bermúdez de Castro, Ruth Blasco, Jordi Rosell, José Carrión, Joaquín Rodríguez-Vidal & Geraldine Finlayson