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2017年12月号Volume 14 Number 12
細胞をつなぐナノチューブ
細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。サイトネームやトンネルナノチューブと呼ばれるこの管は、離れた細胞に物資を輸送する連絡路であることが分かってきた。当初は「培養皿に付いた傷ではないか」と、存在自体が疑われたが、2015年にがん細胞や細菌もこれを利用して拡散している可能性が示されたことで、注目が集まっている。
Editorial
News
重力波源を光で観測
重力波の源を光でも観測することに初めて成功し、重い元素の生成過程など、宇宙のいくつかの謎の解明に大きく近づいた。
独習で最強になった囲碁AI
人工知能プログラム「アルファ碁ゼロ」は、人間の棋譜を学ぶことなく、短期間で囲碁を独習した。
種内競争で毒を強めるオタマジャクシ
ヨーロッパヒキガエルのオタマジャクシが、同種のライバルの数に応じて毒の強さを変えることが明らかになった。これは、動物の毒性が、捕食者ではなく競争者の増加によって増強されることを示した初めての例である。
6大陸の蜂蜜からネオニコチノイド系農薬を検出
ネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響について、新たな調査結果が報告された。
ノーベル物理学賞は重力波を検出した3氏に
重力波観測装置LIGOにより重力波の検出を成功させたレイナー・ワイス、バリー・バリッシュ、キップ・ソーンの3氏がノーベル物理学賞を共同受賞した。
概日時計の機構解明にノーベル医学・生理学賞
細胞の概日リズムを生み出す分子機構を解明した3氏が2017年のノーベル医学・生理学賞を共同受賞した。
ノーベル化学賞は分子イメージングの先駆者に
極低温電子顕微鏡法を開発した3氏にノーベル化学賞が贈られる。
高エネルギー宇宙線の起源は銀河系外
最も高エネルギーの宇宙線の起源は銀河系外であることが、アルゼンチンにある巨大観測所の12年間の観測で確かめられた。
サメは実はもっと長生きだった
過去の年齢調査データを見直したところ過小評価は3割に上り、個体が高齢になるほど顕著であった。この誤りは、サメの保全計画を土台から揺るがす可能性がある。
世界に広がる英国発の男女共同参画推進事業
学術機関における男女共同参画の推進度合いを格付けする英国の「アテネ・スワン」が、世界に広がりつつある。米国では、人種と障害にまで範囲を広げた計画の導入準備が進められている。
News Feature
細胞をつなぐナノチューブ
1999年に報告された、細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。これまで評価されていなかったこの細胞間連絡は、がん細胞や細菌にも利用され、それらが広がるのを助けている可能性が出てきた。
Japanese Author
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FANTOM5データを誰でも活用できる形に
理化学研究所主宰の哺乳類ゲノムの国際研究コンソーシアム、FANTOM。現在の第5期FANTOM5では、500種類以上の細胞(臓器由来含む)ついて、ゲノムから転写されたRNAが網羅的に測定・解析された。FANTOM5データの多くはすでに公開済みだが、データ取得プロセスや試料の品質、データ処理などを詳しく記述した報告は、今回のScientific Data が初めてだ。同時に、FANTOM5などの遺伝子発現データを簡単に検索・閲覧できるウェブツール「RefEx」に関する論文も同誌に報告。公開データの活用を促すこれらの研究に尽力した4人のデータサイエンティストに話を伺った。
News & Views
次世代の細胞運命を決める記憶
娘細胞が増殖するか静止状態になるかは、母細胞から受け継いだ2つの分子で決まることが、生細胞イメージングで明らかになった。今回の知見によって、新しく生じた娘細胞の振る舞いが、その母細胞の状態によって決められる仕組みについての洞察がもたらされた。
わずかなアンモニアを巡る微生物たちの戦い
アンモニアから亜硝酸への酸化と、亜硝酸から硝酸への酸化の両方を行うことができる細菌の純粋培養に、初めて成功した。意外にもこの細菌は、アンモニアから亜硝酸への酸化のみを行う多くの培養微生物よりも、アンモニアの乏しい環境によく適応しているようだ。
ビタミンCが幹細胞とがんを調節する
ビタミンCは、腫瘍抑制タンパク質Tet2への結合を介して造血幹細胞の数と機能を調節し、白血病の発生に影響を及ぼすことが分かった。
News Scan
宇宙用のお役立ち酵母
排泄物を栄養やプラスチックに転換。
心臓の凍結防止
北極の生物にヒントを得た化合物で移植用臓器を長持ちさせる試み。