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Communications Biology に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Article: 同種造血細胞移植後のヒト細胞傷害性T細胞におけるレパートリーの多様性と遺伝子発現の特徴
Features of repertoire diversity and gene expression in human cytotoxic T cells following allogeneic hematopoietic cell transplantation
doi: 10.1038/s42003-021-02709-7
同種幹細胞移植(allo-HCT)あるいは臓器移植の後のサイトメガロウイルスの再活性化は重要な問題である。今回、仲宗根秀樹たちは、allo-HCT後の免疫再構築についての我々の理解を深めるために、臨床的に移入されたT細胞のレパートリーの多様性と遺伝子発現における変化を調べた。
Article: ジェホール(熱河)で見つかった恐竜カウディプテリクス(Caudipteryx)の軟骨における核の保存
Nuclear preservation in the cartilage of the Jehol dinosaur Caudipteryx
doi: 10.1038/s42003-021-02627-8
Zhengたちは、獣脚類の恐竜カウディプテリクス(Caudipteryx)の標本の大腿軟骨に保存された核が存在したことを報告している。脊椎動物の化石において糸状クロマチンの存在が特定されたのは2回目でしかない。
Article: 哺乳類の体サイズは、気候、都市化、生態学的形質の間の相互作用によって決定される
Mammalian body size is determined by interactions between climate, urbanization, and ecological traits
doi: 10.1038/s42003-021-02505-3
人為的に引き起こされる気候変動は、哺乳類の体サイズが小型化する原因である。Hantakたちは、歴史的に収集されたデータからなる重要なデータセットと、全米生態観測施設ネットワーク(National Ecological Observatory Network)の大陸規模の調査の取り組みから得られたデータを用いて、都市化がこの体サイズ動態を仲介する重要な役割を担っていることを示している。
Article: ミトコンドリアのLonプロテアーゼはミトコンドリアマトリックス内に新しく運び込まれたタンパク質のゲートキーパーである
Mitochondrial Lon protease is a gatekeeper for proteins newly imported into the matrix
doi: 10.1038/s42003-021-02498-z
九州大学大学院医学研究院の松島雄一たちは、ヒトのATP依存性のLonプロテアーゼ(LONP1)が、タンパク質の折りたたみをほどく活性を持つミトコンドリアのプロテアーゼであり、ミトコンドリアマトリックスに入ってきたタンパク質のゲートキーパーとして機能することを明らかにした。LONP1は必要なタンパク質の折りたたみを支え、異常なタンパク質を分解する。
Article: 漸新世の巨大サイからパラケラテリウム属(Paraceratherium)の進化についての手掛かりが得られた
An Oligocene giant rhino provides insights into Paraceratherium evolution
doi: 10.1038/s42003-021-02170-6
Dengたちは、中国において2650万年前の上部漸新世のJiaozigou層の標本から巨大サイの新種Paraceratherium linxiaenseを発見したことを報告している。関節でつながった下顎骨と環椎を持つ完全な保存状態の頭蓋骨の形態学的な解析から、高レベルの特殊化が起こったことや、P. bugtienseと近縁なP. lepidumとともに1クレードを形成することが明らかになった。
Article: シアノコバラミンは酸化ストレスやDNMT-SOCS1/3-IGF-1シグナル伝達を調節することで1型糖尿病において心筋症を防ぐ
Cyanocobalamin prevents cardiomyopathy in type 1 diabetes by modulating oxidative stress and DNMT-SOCS1/3-IGF-1 signaling
doi: 10.1038/s42003-021-02291-y
ノースカロライナ大学チャペルヒル校の鹿子木将夫たちは、シアノコバラミン(B12)が、1型糖尿病マウスにおいて、活性酸素種レベルの低下およびDNMT-SOCS1/3シグナル伝達を介したIGF-1レベルの回復により、心筋症を防ぐ役割を持つことを報告している。このことから著者たちは、B12が心保護効果を介して糖尿病性心筋症を防ぐための有望な治療選択肢になると提案している。
Article: 重水の甘味
Sweet taste of heavy water
doi: 10.1038/s42003-021-01964-y
Ben AbuおよびMasonたちは、重水が、通常の水とは異なり、ヒトに甘味を感じさせるが、マウスには甘味を感じさせないことを、分子動力学、細胞ベースの実験、マウスモデル、ヒト被験者を用いて明らかにした。この効果は、機構としては、ヒトのTAS1R/TAS1R3甘味受容体によって仲介される。
Article: 微細藻類のデンプン枝切り酵素の破壊によって炭水化物の脂質やカロテノイドへの再分配が促進される
Enhancing carbohydrate repartitioning into lipid and carotenoid by disruption of microalgae starch debranching enzyme
doi: 10.1038/s42003-021-01976-8
神戸大学先端バイオ工学研究センターの加藤悠一たちは、明暗周期の際にも脂質を蓄積し、また、デンプン枝切り酵素(DBE)をコードするISA1遺伝子に広範な変異を持つ、微細藻類変異株Chlamydomonas sp. KOR1を単離したことを報告している。さらに、DBEの破壊によって、炭水化物の脂質やカロテノイドへの再分配が促進されることで、明/暗条件下でのバイオ燃料生産を改善できることが示された。
Article: エルソルトの糞便堆積物から回収された、ネアンデルタール人の腸マイクロバイオームの構成成分
Components of a Neanderthal gut microbiome recovered from fecal sediments from El Salt
doi: 10.1038/s42003-021-01689-y
S RampelliおよびS Turroniたちは、スペインのエルソルトにある中期旧石器時代の遺跡の4つの層序単元から回収した糞便堆積物についての、太古の細菌プロファイルを報告している。この研究の結果から、ヒトのコアな腸マイクロバイオームは、ネアンデルタール人と現生人類に共通である可能性があり、この2つの系統間の分岐よりも前から存在している可能性が示唆された。
Article: マスノスケは生活環を通じて気候変動により脅かされている
Climate change threatens Chinook salmon throughout their life cycle
doi: 10.1038/s42003-021-01734-w
L Crozierたちは、サーモン川流域の絶滅のおそれがある状態のマスノスケの8つの野生個体群についてのデータベースを構築し、全生命段階での気候の影響の評価と、今後の個体群の軌跡をモデル化した。海面温度の上昇に応じて個体群は急速に縮小すると予測され、この絶滅のおそれがある状態の種に対する気候変動の負の影響を克服するには、スモルトの数や生存を劇的に増加させる必要があると結論付けている。
Article: 始祖鳥(Archaeopteryx)の羽鞘から、飛行に関係していて、中央から外側へ連続的に起こる換羽戦略が明らかになる
Archaeopteryx feather sheaths reveal sequential center-out flight-related molting strategy
doi: 10.1038/s42003-020-01467-2
Thomas Kayeたちは、レーザー励起蛍光法と、知られている最古の鳥である始祖鳥(Archaeopteryx)の化石の証拠を用いて、換羽の最も古い記録を立証し、非常に高度な換羽戦略が鳥類の飛行の進化の予想外に早い段階に発達したことを実証した。この発見は、最初期の鳥類の飛行能力についての重要な手掛かりであり、他の主要な飛行適応より前から存在するものである。
Article: Mycobacteroides abscessus に対するペネム系抗生物質の開発
Development of a penem antibiotic against Mycobacteroides abscessus
doi: 10.1038/s42003-020-01475-2
Batchelderたちは、M. abscessusや嚢胞性線維症患者からの臨床分離株に対して強力な活性を示す新しいペネム系抗生物質T405について報告している。T405に対する抵抗性の発現は、β-ラクタマーゼ阻害剤であるアビバクタムの追加により抑制された。T405の臨床的可能性は、T405がマウスにおいて毒性を示さず、好ましい薬物動態プロファイルを示したことでさらに実証されている。
Article: 霊長類におけるACE2の変動とCOVID-19リスクの比較
Comparative ACE2 variation and primate COVID-19 risk
doi: 10.1038/s42003-020-01370-w
A Melinたちは、霊長類29種においてACE2遺伝子によってコードされる12のアミノ酸残基部位での変動を比較し、類人猿およびアフリカサルやアジアサルが、ヒトACE2と同じ12の重要なアミノ酸残基セットをもつことを明らかにした。この結果から、これらの霊長類がSARS-CoV-2に感受性である可能性が考えられるが、一方ACE2遺伝子配列やタンパク質-タンパク質間相互作用モデルから、広鼻類、メガネザル、ロリス、一部のキツネザルでは感受性が低いことが示唆された。
Article: osgcs1イネによる高品質の糖の産生
High-quality sugar production by osgcs1 rice
doi: 10.1038/s42003-020-01329-x
福建農林大学(中国)および北見工業大学の本間雄二朗たちは、遺伝子ノックアウト技術を用いて、高度に糖を含む米粒を作り出す方法を開発した。この穀物は、将来、別の製糖作物の開発を進める可能性がある。
Article: ウシに人工的な眼状斑点を付けると大型肉食動物による捕食が減少する
Artificial eyespots on cattle reduce predation by large carnivores
doi: 10.1038/s42003-020-01156-0
Radford たちは、ボツワナ北部の非営利的な畜産農場において人工的な眼状斑点を付けたウシを監視し、このような眼状斑点が付いたウシは大型肉食動物による捕食を回避する可能性が高いことを実証した。彼らの知見は、待ち伏せ捕食者による家畜の捕食を減らすための費用対効果の高いツールとして応用性がある。
Article: Cas9を発現するネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei )に直鎖状のドナー鋳型をトランスフェクションすることによるCRISPR/Cas9系の改善
Improvement of CRISPR/Cas9 system by transfecting Cas9-expressing Plasmodium berghei with linear donor template
doi: 10.1038/s42003-020-01138-2
東京医科歯科大学の新澤たちは、マラリアを引き起こす寄生虫であるマラリア原虫(Plasmodium)のトランスフェクション効率を改善するために、Cas9を発現するネズミマラリア原虫に直鎖状のドナー鋳型をトランスフェクションする方法を開発した。 この方法により、ドナー鋳型の効率的な組込みが可能になり、一方、予期しない組換えが防止される。
Article: 核酸の導入が困難なヒト細胞に、サイズの小さなプラスミドを追加することで大きなCRISPR / Cas9ベクターを送達することに成功
Successful delivery of large-size CRISPR/Cas9 vectors in hard-to-transfect human cells using small plasmids
doi: 10.1038/s42003-020-1045-7
Søndergaardetたちは今回、がん細胞株や初代細胞へのエレクトロポレーションやリポフェクタミンベースのトランスフェクションが、大きなCRISPRベクターに、小さなベクターを追加することで改善できることを示している。この研究は、トランスフェクション効率と細胞生存率を上昇させることによって、ゲノムの改変に最適なプロトコルを示している。
Article: 超遠心分析と小角散乱法による生体高分子の構造の統合解析
Integral approach to biomacromolecular structure by analytical-ultracentrifugation and small-angle scattering
doi: 10.1038/s42003-020-1011-4
京都大学の守島健たちは、小角散乱法(SAS)と超遠心分析(AUC)を統合することで、溶液中の生体高分子の散乱強度を解析した。この新しい解析法により、凝集の影響を補正でき、多成分系への適用が可能になる。
Article: ダイズおよびシロイヌナズナの受容体様キナーゼは、スポドプテラ属(Spodoptera)の種由来の多糖シグナルに応答して、植食者に対する抵抗性を仲介する
Soy and Arabidopsis receptor-like kinases respond to polysaccharide signals from Spodoptera species and mediate herbivore resistance
doi: 10.1038/s42003-020-0959-4
東京理科大学の上村卓矢たちは、ダイズおよびシロイヌナズナにおいて植食者に対する抵抗性が生じる機構について研究した。受容体様キナーゼ(HAK1/2)が、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)の吐き戻し液中の多糖に応答し、次にPBL27と相互作用することで、植食者に対してエチレン依存性の抵抗性を引き起こすことが分かった。
Article: 3350万年前と1億400万年前の海洋地殻の玄武岩界面での深海微生物の増殖
Deep microbial proliferation at the basalt interface in 33.5–104 million-year-old oceanic crust
doi: 10.1038/s42003-020-0860-1
東京大学の鈴木庸平、山下誠也たちは、ナノスケールの固体分析手法を用いて、古い海底下玄武岩質岩の鉄が豊富なスメクタイト内に細菌細胞の存在を発見した。それらの脂質プロファイルとDNA塩基配列の解析から、従属栄養細菌が優勢を占めることが明らかになったことから、海底玄武岩に有機物資源が存在することが示唆された。
Article: 生活様式が認知機能の老化における栄養感知経路の役割を仲介する:細胞および疫学からの証拠
Lifestyle mediates the role of nutrient-sensing pathways in cognitive aging: cellular and epidemiological evidence
doi: 10.1038/s42003-020-0844-1
Chiara de Luciaたちは、 栄養を感知する候補遺伝子の遺伝的バリアントと、それらのヒトコホートにおける生活様式の要因や認知能力との関連と、in vitroモデル系におけるこれらの遺伝子の発現レベルとの関係を調べた。ABTB1とGRB10が、老化、生活様式、認知能力に関与する重要な遺伝子であることが分かった。
Article: 日本人集団におけるミトコンドリアゲノムの遺伝的および表現型の全体像
Genetic and phenotypic landscape of the mitochondrial genome in the Japanese population
doi: 10.1038/s42003-020-0812-9
山本賢一たちは、バイオバンク・ジャパンのプロジェクトの日本人におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)の遺伝的解析とフェノーム規模の関連解析を報告した。ミトコンドリアの遺伝的全体像が説明され、また5つの遅発性の複合形質に関連する多面発現mtDNAバリアントが特定された。
Article: 大腸菌におけるリボソーム構成要素の包括的な解析のための、機能的なリボソーム小サブユニット組み立てのin vitroでの再構成
In vitro reconstitution of functional small ribosomal subunit assembly for comprehensive analysis of ribosomal elements in E. coli
doi: 10.1038/s42003-020-0874-8
下條たちは、精製された各リボソームタンパク質をiSAT(integrated ribosomal synthesis, assembly, and translation)系に加えることで、機能的な30Sサブユニットの組み立てが可能になることを実証した。さらに、30Sリボソームタンパク質のいくつかは転写が開始する前に完全に合成されなければならないが、他のタンパク質はおそらく転写とともに合成されることで、30S粒子の組み立てが可能になることも示した。
Article: 生体分子解析から、更新世の鳥のほぼ無傷の遺骸の年齢、性別、種のアイデンティティーが明らかになる
Biomolecular analyses reveal the age, sex and species identity of a near-intact Pleistocene bird carcass
doi: 10.1038/s42003-020-0806-7
Nicolas Dussexたちは、シベリアの永久凍土で見つかった44,000〜49,000年前の鳥が、古代のDNAを用いることで、雌のハマヒバリであることを特定した。この非常によく保存された試料は、古代の生態系の生態学的性質や進化の研究などの永久凍土埋蔵物の科学、分子時計のキャリブレーション、気候変動に関係した生物学的調節や遺伝子発現などの過程についての我々の理解の促進、に関与する可能性を示している。
Article: カッシオソームはサカサクラゲCassiopea xamachanaの粘液における刺細胞構造である
Cassiosomes are stinging-cell structures in the mucus of the upside-down jellyfish Cassiopea xamachana
doi: 10.1038/s42003-020-0777-8
Cheryl L Ames、Anna Klompenたちは、サカサクラゲCassiopea xamachanaの粘液における刺細胞構造であるカッシオソーム(cassiosome)について報告している。これらの運動性細胞塊は、内部共生渦鞭毛藻が集まって形成したクラスターを取り囲む、主に刺細胞で構成される外側上皮層で構成されることが分かった。
Article: 進化的に保存された鉄-硫黄クラスターはCSK(Chloroplast Sensor Kinase)の酸化還元シグナルを感知する機能の基盤である
An evolutionarily conserved iron-sulfur cluster underlies redox sensory function of the Chloroplast Sensor Kinase
doi: 10.1038/s42003-019-0728-4
Ibrahimたちは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)および珪藻であるPhaeodactylumのCSK(Chloroplast Sensor Kinase)と、シアノバクテリアのCSKホモログであるヒスチジンキナーゼ2が、鉄-硫黄タンパク質であることを示した。この研究から、葉緑体のCSKを基盤とする二成分系がプラストキノン酸化還元シグナルを感知および伝達する仕組みについて手掛かりが得られた。
Article: マウスの確定論的タスクでは選択のばらつきが適応的に生じる
Mice adaptively generate choice variability in a deterministic task
doi: 10.1038/s42003-020-0759-x
Marwen Belkainたちは、意思決定過程でのばらつきを研究するために、確定論的タスクを開発した。マウスでは、効果的な意思決定戦略として、行動のばらつきが生じていることが分かり、環境統計データとは独立にランダムな決定を行う、脳の能力が明らかになった。
2019年11月 遺伝学
Article: 自閉症の症状および形質領域は遺伝学によって社会的なものと非社会的なものに区別される
Social and non-social autism symptoms and trait domains are genetically dissociable
doi: 10.1038/s42003-019-0558-4
自閉症に関連する非社会的形質「システム化」のゲノムワイド関連解析をV Warrierたちが行ったところ、システム化と関連する座位が3個発見され、この形質と社会的表現型の尺度との間には有意な遺伝学的相関がないことが明らかになった。この結果は、自閉症の社会的側面と非社会的側面とが遺伝学的に区別されることを示している。
Article: 英国バイオバンクでの膝痛のゲノムワイド関連解析からGDF5およびCOL27A1の関連が明らかになった
Genome-wide association study of knee pain identifies associations with GDF5 and COL27A1 in UK Biobank
doi: 10.1038/s42003-019-0568-2
W Meng、M Adamsたちが英国バイオバンクで膝痛のゲノムワイド関連解析を行い、GDF5およびCOL27A1の近傍という2つの座位が有意に関連していることを発見した。膝痛の代わりに自己申告による変形性関節症や放射線画像による変形性膝関節症を用いた別コホートの関連データも、今回の知見を裏付けている。
Article: 東アジアのマウスにおける内在性レトロウイルスの入れ子型挿入が古典的ノンアグーチ変異の原因である
Nested retrotransposition in the East Asian mouse genome causes the classical nonagouti mutation
doi: 10.1038/s42003-019-0539-7
内在性レトロウイルスの入れ子型挿入が古典的ノンアグーチ変異の原因であることを、国立遺伝学研究所の田邉彰、今井悠二、小出剛が見いだした。アグーチ遺伝子のイントロン内のVL30レトロウイルスに組み込まれたβ4エレメントが異常なスプライシングを引き起こし、ノンアグーチの毛色を生じることが明らかになった。このアレルは東アジアのマウス系統で生じたらしいことが示された。
Article: DMDとヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子SETD2の反復的変異がイヌ骨肉腫のゲノム塩基配列解読によって発見された
Canine osteosarcoma genome sequencing identifies recurrent mutations in DMD and the histone methyltransferase gene SETD2
doi: 10.1038/s42003-019-0487-2
H Gardnerたちがイヌ骨肉腫のゲノムの全容を調べ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子SETD2およびジストロフィンをコードする遺伝子DMDに反復的変異を見出した。この結果は、ヒト疾患の機序とイヌ特異的な変化の両方を理解して新たな治療法を発見するうえで、イヌで自然に生じる骨肉腫の研究が有用であることを裏付けている。
Article: 樹脂のガムから抽出された古代DNAは中石器スカンジナビア狩猟採集民の物質文化と遺伝学的性質とのつながりを確かなものにする
Ancient DNA from mastics solidifies connection between material culture and genetics of mesolithic hunter–gatherers in Scandinavia
doi: 10.1038/s42003-019-0399-1
スウェーデン西部で収集された古代のチューイングガムから抽出したヒトDNAをN Kashubaたちが解析した。3人のスカンジナビア狩猟採集民のゲノム情報が得られ、この遺伝的集団の範囲が広がって東方の石器技術と結び付けられた。
2019年10月 微生物学
Article: 互恵的細菌群集内の空間的配置が群集の抗生物質耐性を増強する
Spatial coordination in a mutually beneficial bacterial community enhances its antibiotic resistance
doi: 10.1038/s42003-019-0533-0
抗生物質による選択圧が互恵的細菌群集の空間的分布を変化させることによってその群集に増殖優位性が生じることを、L Liたちが明らかにした。そうした群集では、ある菌株が栄養素の供給役、別の菌株が抗生物質の防御役となっている。この研究は、空間的配置が互恵的共生を促進する戦略となることを示している。
Article: 出芽酵母が分泌する細胞外小胞は細胞壁の再構築に関与する
Extracellular vesicles secreted by Saccharomyces cerevisiae are involved in cell wall remodeling
doi: 10.1038/s42003-019-0538-8
酵母の細胞外小胞にはESCRTタンパク質が欠乏している一方でFks1とChs3が豊富に含まれていることを、K Zhaoたちが明らかにした。Fks1とChs3を豊富に含む細胞外小胞への暴露によって抗真菌剤の毒性効果が緩和されることから、酵母の細胞外小胞が細胞壁の再構築で担う役割が示唆された。
Article: ハイコンテントスクリーニングによる巨大ウイルスのハイスループット分離
High-throughput isolation of giant viruses using high-content screening
doi: 10.1038/s42003-019-0475-6
共培養物中の感染アメーバを標的とする最適化されたアルゴリズムを用いて巨大ウイルスをリアルタイムに発見・分離するための新たな戦略を、R Francisたちが開発した。塩基配列解読技術を必要としないこの新たな手法は、他のハイスループット法と比較して高感度で、速度が100倍である。
Article: 海洋シアノバクテリアTrichodesmiumのコロニーは付随する細菌と相互作用して塵埃から鉄を獲得する
Colonies of marine cyanobacteria Trichodesmium interact with associated bacteria to acquire iron from dust
doi: 10.1038/s42003-019-0534-z
塵埃からの鉄の利用をめぐる海洋窒素固定シアノバクテリアTrichodesmiumとそれに付随する細菌との相利的相互作用の証拠を、S Basuたちが示している。シデロフォア(鉄錯化分子)が加わることで鉄酸化物の溶解と鉄の取り込みが促進され、Trichodesmiumと付随細菌の両者が恩恵を受けている。
Article: 細菌のハイスループット時間分解形態スクリーニングが抗生物質に対する表現型応答を明らかにする
High-throughput time-resolved morphology screening in bacteria reveals phenotypic responses to antibiotics
doi: 10.1038/s42003-019-0480-9
ハイスループット時間分解顕微鏡法によるスクリーニングを行ったT Zahirたちが、抗生物質に対する形態変化を生じさせる細菌遺伝子を発見した。画像解析ワークフローにより、形態の変化に応じて単一細胞や欠失株が分類される。
2019年9月 生態学
Article: 繁殖地の分断化で蚊の個体群の持続が抑えられることが微細スケールモデリングで明らかになった
Fine-scale modelling finds that breeding site fragmentation can reduce mosquito population persistence
doi: 10.1038/s42003-019-0525-0
蚊の個体群の微細スケールの動態に繁殖地の分断化がどのような影響を与えるかをC McCormackたちが調べた。密度が低いと分断化が個体群サイズの縮小につながり、個体群の持続が成体の分散に依存する場合があることが示された。
Article: 体色の変化と行動の選択は異なる海藻の背景に対するナガレモエビ属種のカムフラージュに役立つ
Colour change and behavioural choice facilitate chameleon prawn camouflage against different seaweed backgrounds
doi: 10.1038/s42003-019-0465-8
S GreenとR Duarteたちが、魚類視覚モデルを用いて、海藻を背景とする緑色と赤色のHippolyte varians(ナガレモエビ属の1種)のカムフラージュを定量化した。体色が時間をかけて変化する一方、エビは行動を短時間で変化させて体色に合う背景を選択することが明らかになった。
Article: 菌根菌と土壌微生物群集の間の相乗作用が植物による窒素の取り込みを強化する
Synergies between mycorrhizal fungi and soil microbial communities increase plant nitrogen acquisition
doi: 10.1038/s42003-019-0481-8
菌根菌と土壌微生物の間で行われて植物による窒素の取り込みを調節している相乗作用をR Hestrinたちが調べた。アーバスキュラー菌根植物が有機物から取り込む窒素の過半は、菌根菌と土壌微生物との非相加的作用によると考えられることがわかった。
Article: サヘル地域では降水量配分の変化が木本植物の葉の形成を促進する
Changes in rainfall distribution promote woody foliage production in the Sahel
doi: 10.1038/s42003-019-0383-9
M Brandtたちが30年間にわたるセネガルの葉量を調べ、乾燥地の植生に対する気候変動の影響を観察した。降水は草本と木本の両方で葉量の増加を引き起こしたが、木本植生には降水タイミングの変化が有利に働き、地域の草食動物集団に連鎖的な影響が及ぶ可能性がある。
Article: 局所的な人工の伴流は最上位捕食者に予測可能な採餌ホットスポットを生じる
Localised anthropogenic wake generates a predictable foraging hotspot for top predators
doi: 10.1038/s42003-019-0364-z
L Lieberたちが 自然の伴流と人工的な伴流の周囲で海鳥の採餌を調べ、タービン構造物からの伴流が海鳥に予測可能な高強度の採餌ホットスポットを生じることを見いだした。この結果は、沖合の構造物を設置または撤去するときに物理的フォーシングの変化が最上位捕食者に対してもつ重要性を示している。
Article: 環境DNA研究の急速な進展と将来
Rapid progression and future of environmental DNA research
doi: 10.1038/s42003-019-0330-9
自然環境から直接得た環境DNA(eDNA)を用いる生物多様性研究の現状と、保全や生態学研究におけるその活用について、M Seymourが論じている。記事では、技術としてのeDNAがどのように学際的共同研究を促進可能であるかを探っている。
2019年8月 発生生物学
Article: カラクシンは繊毛によって駆動される脊椎動物の左右性決定に必要である
Calaxin is required for cilia-driven determination of vertebrate laterality
doi: 10.1038/s42003-019-0462-y
カラクシン欠損マウスが一次繊毛の運動異常と9 + 0構造のノード繊毛の異常形成を呈しながら正常な生殖を行う一方、ゼブラフィッシュのカラクシン欠損が内臓逆位を引き起こしながら9 + 2構造の軸糸形成には影響しないことを、K Sasaki、K Shiba、A Nakamuraたちが明らかにした。その知見をまとめると、9 + 0構造のノード繊毛の発生でカラクシンが果たす明確な役割が示唆された。
Article: オープンクロマチンの発生的調節にLHX2が必要であることが網膜前駆細胞のエピゲノムプロファイリングで明らかになった
Epigenomic profiling of retinal progenitors reveals LHX2 is required for developmental regulation of open chromatin
doi: 10.1038/s42003-019-0375-9
発生初期および後期のマウス網膜前駆細胞のATAC-seq、RNA-seq、およびChIP-seq解析結果を、C Zibettiたちが示している。クロマチン接近可能性の全般的制御でLIMホメオドメイン転写因子LHX2が担う中心的な役割が明らかになり、網膜でオープンクロマチンの形成と維持に寄与すると考えられるLhx2依存的なパイオニア因子の候補が見いだされた。
Article: マウス胎仔の正常な発生には母体肝臓のグルココルチコイド受容体のサイレンシングが不可欠である
Silencing of maternal hepatic glucocorticoid receptor is essential for normal fetal development in mice
doi: 10.1038/s42003-019-0344-3
妊娠マウスの肝臓ではグルココルチコイド受容体の発現量がエピジェネティックな制御によって減少するためにストレス応答が低下していることを、M Quinnたちが明らかにした。この低下は胎仔の発生に不可欠であり、母体ストレスモデルでグルココルチコイド活性化の組織特異的な影響を理解することの重要性を浮き彫りにしている。
Article: コレステロールの薬理学的減少はゼブラフィッシュ胚の繊毛の形成と機能を阻害する
Pharmacological cholesterol depletion disturbs ciliogenesis and ciliary function in developing zebrafish
doi: 10.1038/s42003-018-0272-7
ゼブラフィッシュ胚のコレステロール合成を薬理学的に阻害すると、器官の奇形とともに、繊毛の形成およびシグナル伝達の機能障害が生じることを、L Maerzたちが明らかにした。こうした知見を繊毛移行帯の変化と合わせることにより、繊毛の生合成と機能でコレステロールが担う重要な役割が示唆された。
Article: ニワトリ胚の漿尿膜で動静脈が織り交ざる仕組みが毛細血管の直接的な画像化で明らかにされた
Direct imaging of capillaries reveals the mechanism of arteriovenous interlacing in the chick chorioallantoic membrane
doi: 10.1038/s42003-018-0229-x
ニワトリ胚の漿尿膜で血管系の発生を詳細に調べた結果を、S Richardたちが示している。動脈と静脈が織り交ざるのは、動脈の遠位末端と近位末端に作用する血流力学的抵抗の違いによって静脈の排斥と誘引が交互に生じるためであることが明らかになった。
Article: Sox9はマウス胚の乳房前駆細胞の状態と活性を調節する
Sox9 regulates cell state and activity of embryonic mouse mammary progenitor cells
doi: 10.1038/s42003-018-0215-3
N Kogataたちがマウスの乳房前駆細胞株を作製した。その細胞株は細胞塊を形成し、ホルモン刺激を受けると乳汁を分泌する。Sox9を欠失させると、その細胞の細胞塊形成能は向上したが、泌乳刺激が誘導する乳汁産生は抑制された。この結果は、転写因子Sox9が幹細胞状態の維持で担う役割と整合する。
2019年7月 進化生物学
Article: 細胞型の系統解析が棘皮動物幼生の骨格形成細胞の種類に関する進化的起源を明らかにする
Cell type phylogenetics informs the evolutionary origin of echinoderm larval skeletogenic cell identity
doi: 10.1038/s42003-019-0417-3
E ErkenbrackとJ Thompsonが、棘皮動物幼生の骨格形成細胞の祖先状態を再構築してその類縁関係を調べ、細胞型の進化を解明した。著者たちは、幼生の骨格形成細胞の起源が遊在類のステム群系統にあると考えている。
Article: 足の速い小型ティラノサウルス類恐竜が7000万年にわたる北米の化石記録の空白を埋める
Diminutive fleet-footed tyrannosauroid narrows the 70-million-year gap in the North American fossil record
doi: 10.1038/s42003-019-0308-7
新種のティラノサウルスを発見したことを、L Zannoたちが明らかにしている。それは、7000万年にわたる化石記録の空白を埋めるのに役立つものだ。この新種から、北米の最初期のティラノサウルスが生存をスピードと体の小ささに依存していたこと、そして頂点捕食者としての地位や大きな体を獲得したのが進化史のかなり後になってからであることが明らかになった。
Article: DUF26を有する陸上植物タンパク質の進化に関する機構的洞察
Mechanistic insights into the evolution of DUF26-containing proteins in land plants
doi: 10.1038/s42003-019-0306-9
A Vaattovaaraたちは、陸上植物に特異的な代表的タンパク質ファミリーである「DUF26を有するタンパク質」の進化史を調べた。その結果、このタンパク質ファミリーではドメイン重複と再編成によって2つの主要なサブクラスが生じたことが示唆された。
Article: 大気中CO2の増加が蚊(双翅目カ科)の種分化を促進した
Elevated atmospheric CO2 promoted speciation in mosquitoes (Diptera, Culicidae)
doi: 10.1038/s42003-018-0191-7
大気中CO2の増加が蚊の種分化を加速させていることを、C TangおよびK E Davisたちが明らかにした。その研究は、気候変動が哺乳類の病原体媒介動物の進化を促進し、媒介動物と病原体との相互作用を強化してヒトの健康に影響を及ぼす可能性があることを示している。
Article: 集団ゲノム解析がカカオTheobroma cacao L.の栽培化過程を明らかにする
Population genomic analyses of the chocolate tree, Theobroma cacao L., provide insights into its domestication process
doi: 10.1038/s42003-018-0168-6
遺伝学的に異なる10以上の集団を代表する200本のカカオ(Theobroma cacao L.)のゲノム解析結果を、O Cornejoたちが発表している。カカオの栽培化に寄与したものとして代謝遺伝子や病害抵抗性遺伝子が特定され、栽培化集団では有害な変異が高率で維持されていることが明らかになった。
Article: 同系集団内の適応度の変動は適応度の谷を越えるための新たな進化機構につながる
Fitness variation in isogenic populations leads to a novel evolutionary mechanism for crossing fitness valleys
doi: 10.1038/s42003-018-0160-1
体細胞やがん細胞のように適応度の谷を越えて無性的に増殖する集団の動態に関する確率論的コンピューターモデルを、D Van Egerenたちが紹介している。著者たちは、世代を越えて持続する適応度の変動が、有害な中間体の淘汰を弱め、適応度の谷を越える割合を高めることを見いだした。
2019年6月 生物工学
Article: ナノ繊維の足場を用いた筋容積喪失マウスの治療が血管の構築と統合化を促進する
Treatment of volumetric muscle loss in mice using nanofibrillar scaffolds enhances vascular organization and integration
doi: 10.1038/s42003-019-0416-4
K Nakayamaたちは、平行に整列させたナノ繊維の足場を用いて、内皮化したマウス骨格筋を生物工学的に作製した。整列した足場を用いて作製された筋肉は空間的パターンをもつ構造を生じ、方向性のランダムな足場で作製された筋肉と比較して内皮相互作用が優れていた。
Article: マルチフローチャネルのバイオリアクターが立体培養組織中の細胞動態のリアルタイム監視を可能にする
Multi-flow channel bioreactor enables real-time monitoring of cellular dynamics in 3D engineered tissue
doi: 10.1038/s42003-019-0400-z
Zoharたちは、蛍光標識細胞を立体構築物に埋め込み、異なるフロー条件でリアルタイムな画像化を行った。この研究は、組織発生中の細胞活動の連続追跡を可能とする機構を提供し、それが薬剤スクリーニングや細胞毒性評価に有用である可能性を示唆している。
Article: 微生物の生合成遺伝子クラスターの共進化多遺伝子モジュールをコンピューターで特定する
Computational identification of co-evolving multi-gene modules in microbial biosynthetic gene clusters
doi: 10.1038/s42003-019-0333-6
細菌の生合成遺伝子クラスターを検出するための教師なしの統計的方法を、F Del Carratoreたちが紹介している。既知のモジュールが多数確認されるとともに、新たなモジュールが大量に発見され、それは有用性の高い化合物の生合成に役立つ可能性がある。
Comment: 心血管組織工学における重要なボトルネック
Big bottlenecks in cardiovascular tissue engineering
doi: 10.1038/s42003-018-0202-8
このCommentでは、心血管組織工学における最近の進展や、それを臨床化するうえで解決すべきいくつかの大きな課題について、N Huangたちが考察している。著者たちは、この分野が重点的に取り組むべき将来的方向性を提案する。
Article: 遺伝子改変を行ったヒト筋肉移植片がマウス宿主の新血管形成と筋発生を強化する
Genetically engineered human muscle transplant enhances murine host neovascularization and myogenesis
doi: 10.1038/s42003-018-0161-0
血管が形成済みの人工ヒト筋肉をマウスに移植することによって腹筋の欠損が修復されることを、L Perryたちが明らかにした。研究チームは、VEGFを分泌する平滑筋細胞とANGPT1を分泌する内皮細胞を遺伝子工学的に作製し、それが宿主の新血管形成と筋発生を大幅に改善することを示している。
2019年5月 分子生物学
Article: Mycが誘導するクロマチン接近可能性はCdc45のCMGヘリカーゼへの集合を調節する
Myc-driven chromatin accessibility regulates Cdc45 assembly into CMG helicases
doi: 10.1038/s42003-019-0353-2
MycがそのボックスIIドメインを介してクロマチンの接近可能性を高め、Mycの標的部位でCdc45-MCM-GINSヘリカーゼを活性化させることを、Nepon-Sixt、Bryant、Alexandrowが明らかにした。この研究は、DNA複製の過剰な活性化でMycが果たす非転写性の役割を示し、Myc誘導性の腫瘍発生に関する理解を深化させている。
Article: ハイスループットの集積マイクロ流体工学的方法でチロシンの自己リン酸化が発見される
A high-throughput integrated microfluidics method enables tyrosine autophosphorylation discovery
doi: 10.1038/s42003-019-0286-9
集積マイクロ流体工学とアレイを用いてチロシンの自己リン酸化を直接検出および解析する方法を、H Nevenzal、M Noach-Hirshたちが紹介している。その方法は、可溶性や膜貫通型のチロシンキナーゼに加えてin vitroの膜にも利用可能であることが示された。
Article: ヒト細胞内でのRNA結合タンパク質によるRNA編集の調節
Regulation of RNA editing by RNA-binding proteins in human cells
doi: 10.1038/s42003-018-0271-8
A-to-I(アデノシンからイノシンへの)RNA編集の仲介における200種類以上のRNA結合タンパク質の役割をG Quinones-Valdezたちが調べた。その結果、ADAR1の発現や相互作用、Aluエレメントとの結合を細胞型特異的に調節するRNA結合タンパク質が複数発見された。
Article: 炭水化物、タンパク質、低分子およびヒストンのデアセチラーゼに関する構造化学生物学
Structural and chemical biology of deacetylases for carbohydrates, proteins, small molecules and histones
doi: 10.1038/s42003-018-0214-4
M BürgerとJ Choryは、さまざまな門の多様な機能に関する脱アセチル化反応を行う酵素の構造的要件を考察した。多数の標的分子に対してそうした酵素がどのように適応して特異性を獲得したのかが検討された。
Article: BMAL1、HSF1、p53の間の協調的相互作用は哺乳類細胞をUVストレスから保護する
Cooperative interaction among BMAL1, HSF1, and p53 protects mammalian cells from UV stress
doi: 10.1038/s42003-018-0209-1
河村玄気たちは今回、細胞が概日時計、熱ショック応答、腫瘍抑制機構の間の協調的な相互作用によってUVストレスから保護されていることを明らかにした。この研究は、細胞ストレスに対する適応戦略たる概日時計の新たな防御的役割を明らかにしている。
2019年4月 植物科学
Article: DYWドメインを有する植物タイプのペンタトリコペプチド反復配列タンパク質が大腸菌でのC-to-U RNA編集を進行させる
Plant-type pentatricopeptide repeat proteins with a DYW domain drive C-to-U RNA editing in Escherichia coli
doi: 10.1038/s42003-019-0328-3
B Oldenkottたちは、DYWドメインを有する単一の蘚類ペンタトリコペプチド反復配列タンパク質が、大腸菌(Escherichia coli)で効率的なC-to-U(シチジンからウリジンへの)RNA編集を進行させるのに十分であることを明らかにした。この研究は、RNA標的の認識やC-to-U RNA編集の研究を進めていくうえで、この大腸菌の系が操作の容易なプラットフォームとなることを実証している。
Article: DUF26を有する陸上植物タンパク質の進化に関する機構的洞察
Mechanistic insights into the evolution of DUF26-containing proteins in land plants
doi: 10.1038/s42003-019-0306-9
A Vaattovaaraたちは、陸上植物に特異的な代表的タンパク質ファミリーである「DUF26を有するタンパク質」の進化史を調べた。その結果、このタンパク質ファミリーではドメイン重複と再編成によって2つの主要なサブクラスが生じたことが示唆された。
Article: バショウ属種のBゲノムに内在するバナナストリークウイルスをCRISPR/Cas9で編集してバナナ育種の重要課題を解決する
CRISPR/Cas9 editing of endogenous banana streak virus in the B genome of Musa spp. overcomes a major challenge in banana breeding
doi: 10.1038/s42003-019-0288-7
J Tirpathiたちは、プランテンのBゲノムに内在するバナナストリークウイルスの塩基配列をCRISPR/Cas9によって不活性化させる戦略を発表している。編集を行った植物の4分の3にはストレス状況下でウイルスの病徴が発現しないことが示され、プランテンやバナナの育種に適した改良型Bゲノムの遺伝資源が得られた。
Article: SnRK2タンパク質キナーゼ群は植物が陸上環境への適応に用いた古いシステムである
SnRK2 protein kinases represent an ancient system in plants for adaptation to a terrestrial environment
doi: 10.1038/s42003-019-0281-1
A Shinozawa、R Otakeたちは、ABAシグナル伝達に関与するSnRK2(SNF1-related protein kinase 2)ファミリーの古いサブクラスが蘚類を乾燥ストレスから保護していることを明らかにした。研究チームはこのシグナル伝達モジュールについて、初期の陸上植物で脱水応答を調節するために進化したものではないかと考えている。
Article: 菌根共生関係の強さは植物宿主・真菌類共生体の進化史が予測する
Evolutionary history of plant hosts and fungal symbionts predicts the strength of mycorrhizal mutualism
doi: 10.1038/s42003-018-0120-9
J Hoeksemaたちは、植物と真菌類の646通りの組み合わせで菌根共生関係の結果を生じさせる要因に関するメタ解析の結果を示している。菌根共生関係の強さの多様性は、生態学的要因よりも進化史によって説明される部分がかなり大きいことが明らかになった。
2019年3月 バイオインフォマティクス
Article: クローン集団情報の確率論的統合による体細胞変異の検出と分類
Somatic mutation detection and classification through probabilistic integration of clonal population information
doi: 10.1038/s42003-019-0291-z
同一患者に由来する複数の腫瘍試料に関して同時に変異の検出および分類を行う方法MuCloneを、F Dorriたちが紹介している。クローン情報によって体細胞変異の検出感度が高まることが明らかになった。
Article: 体細胞性の非生殖巣組織で発現するアノテーション済みpiRNAの大半は非コードRNA断片が占める
Non-coding RNA fragments account for the majority of annotated piRNAs expressed in somatic non-gonadal tissues
doi: 10.1038/s42003-017-0001-7
J P Tosarたちは今回、既存のデータベースを解析し、哺乳類の生殖巣外での発現が報告されているpiRNAが真のpiRNAなのか、それとも夾雑物の可能性が高いのかを調べた。その結果、その大半は真のpiRNAではなく、他の低分子RNA クラスに由来する非コードRNAの断片であると結論づけられた。
Article: CRISPRminerは微生物・ファージ相互作用におけるCRISPR –Cas系を調べるためのナレッジベースである
CRISPRminer is a knowledge base for exploring CRISPR-Cas systems in microbe and phage interactions
doi: 10.1038/s42003-018-0184-6
微生物3500種以上のCRISPR –Cas系を調べるための網羅的データベースであり、詳細なデータマイニングを行うためのウェブサーバーでもあるCRISPRminerを、F Zhangたちが紹介している。CRISPRminerでは、CRISPR –Cas系の予測や、自己標的化CRISPR、微生物・ファージ間の相互作用ネットワーク、および抗CRISPR特性の研究を行うことができる。
Article: イネの2D関連および統合オミクス解析から形質解析のシステム生物学的視野が得られる
2D association and integrative omics analysis in rice provides systems biology view in trait analysis
doi: 10.1038/s42003-018-0159-7
W Zhangたちは、ゲノム規模、トランスクリプトーム規模、メタボローム規模の関連解析で得られたデータを用いて形質解析を行うためのツールを開発した。この手法をイネで試したところ、明らかになった形質に関するシステム生物学的な視野が得られた。
Article: ShinyアプリケーションHTPmodは大規模な生物学的データのモデル化と可視化を可能にする
The HTPmod Shiny application enables modeling and visualization of large-scale biological data
doi: 10.1038/s42003-018-0091-x
大規模なゲノムデータセットとフェノームデータセットのモデル化および可視化を行うためのShinyウェブアプリケーションHTPmodを、D Chenたちが紹介している。HTPmodは、ハイスループットの生物学的データセットの解析を速やかに再現することができ、論文発表に堪える質の図版を作成可能であることが示された。
2019年2月 生化学
Article: 抗菌ペプチドpolybia-CPの構造と機能に基づく研究による活性の決定因子の特定および人工的な治療薬候補の作製
Structure-function-guided exploration of the antimicrobial peptide polybia-CP identifies activity determinants and generates synthetic therapeutic candidates
doi: 10.1038/s42003-018-0224-2
M. D. T. Torresたちは、ハチ由来の毒性抗菌ペプチドpolybia-CPから、マウスモデルで治療作用を発揮する実用的な抗菌剤を作製した。この研究は、物理化学的特性に基づく合理的設計戦略がペプチド系抗生物質の作製に利用可能であることを実証している。
Review Article: 炭水化物、タンパク質、低分子およびヒストンのデアセチラーゼに関する構造化学生物学
Structural and chemical biology of deacetylases for carbohydrates, proteins, small molecules and histones
doi: 10.1038/s42003-018-0214-4
M BürgerとJ Choryは、さまざまな門の多様な機能に関する脱アセチル化反応を行う酵素の構造的要件を考察した。多数の標的分子に対してそうした酵素がどのように適応して特異性を獲得したのかが検討された。
Article: 分泌型組換えタンパク質のネイティブ質量分析による迅速な特性評価
Rapid characterization of secreted recombinant proteins by native mass spectrometry
doi: 10.1038/s42003-018-0231-3
Ben-Nissanたちは今回、培地中の組換えタンパク質の特性を直接調べるための迅速な質量分析法を紹介している。その方法は酵母、昆虫、およびヒトの細胞から分泌される組換えタンパク質で試験が行われ、溶解性、分子量、構造、リガンド結合、および翻訳後修飾が明らかにされた。
Article: ドキソルビシンはカスパーゼによるKV7.1のタンパク質分解を誘発する
Doxorubicin induces caspase-mediated proteolysis of KV7.1
doi: 10.1038/s42003-018-0162-z
A Strigliたちは、電位依存性カリウムチャネルKv7.1がカスパーゼによるタンパク質分解で切断され、それによって心臓での活性が低下することを明らかにした。その知見はカスパーゼがIKsチャネル複合体の調節因子であることを示しており、それは薬物誘発性心毒性の理解に役立つ可能性がある。
Article: 大規模メタボロームの薬物プロファイリングの枠組みから補酵素Aの代謝と抗がん剤ジクロロ酢酸の毒性とのつながりが明らかになった
A framework for large-scale metabolome drug profiling links coenzyme A metabolism to the toxicity of anti-cancer drug dichloroacetate
doi: 10.1038/s42003-018-0111-x
S Dubuisたちは今回、抗がん剤ジクロロ酢酸に対する5株の卵巣がん細胞の動的な代謝適応を調べた。この研究により、ジクロロ酢酸の毒性の発揮で補酵素Aの代謝が果たす意外な役割が発見され、薬物代謝プロファイリングの威力が示された。
2019年1月 細胞生物学
Article: ゴルジ体ストレスはヒト細胞の酸化還元不均衡とフェロトーシスを生じる
Golgi stress mediates redox imbalance and ferroptosis in human cells
doi: 10.1038/s42003-018-0212-6
H Alborzinia たちは、ゴルジ体を破壊する化合物が鉄依存的な酸化的脂質分解を引き起こし、フェロトーシスと呼ばれる非アポトーシス細胞死を誘発することを明らかにした。この研究は、ゴルジ装置が細胞の酸化還元制御を介したフェロトーシス細胞死の抑制で果たす役割を明らかにしている。
Article: BMAL1、HSF1、p53の間の協調的相互作用は哺乳類細胞をUVストレスから保護する
Cooperative interaction among BMAL1, HSF1, and p53 protects mammalian cells from UV stress
doi: 10.1038/s42003-018-0209-1
河村玄気たちは今回、細胞が概日時計、熱ショック応答、腫瘍抑制機構の間の協調的な相互作用によってUVストレスから保護されていることを明らかにした。この研究は、細胞ストレスに対する適応戦略たる概日時計の新たな防御的役割を明らかにしている。
Article: アルギニン飢餓はアスパラギン酸の枯渇とミトコンドリアの機能不全を介して腫瘍細胞を殺傷する
Arginine starvation kills tumor cells through aspartate exhaustion and mitochondrial dysfunction
doi: 10.1038/s42003-018-0178-4
C-T Chengたちは今回、アルギニン要求性のがん細胞がアルギニン飢餓で死滅するのは、アスパラギンシンテターゼ(ASNS)によってがん細胞のアスパラギン酸が枯渇し、そのミトコンドリア代謝が乱されるためであることを明らかにした。この研究は、ASNSの誘発するアスパラギン酸枯渇が抗がん療法になることを示している。
Article: 核内のRIPK3とMLKLが細胞質のネクロソーム形成とネクロトーシスに寄与する
Nuclear RIPK3 and MLKL contribute to cytosolic necrosome formation and necroptosis
doi: 10.1038/s42003-017-0007-1
K Weberたちは、ネクロソーム構成因子のRIPK3とMLKLがたえず核と細胞質を行き来していることを明らかにした。そして、RIPK3とMLKLの核:細胞質比率が上昇するとネクローシス細胞死が抑制されることを発見し、細胞がネクロソームの形成と死を調節する機構を示唆している。
2018年12月 神経科学
Article: 室傍核のオキシトシンニューロンの活性化は心筋梗塞を生じたラットの心臓交感神経を活性化させる
Activation of oxytocin neurons in the paraventricular nucleus drives cardiac sympathetic nerve activation following myocardial infarction in rats
doi: 10.1038/s42003-018-0169-5
Royたちは、室傍核小細胞領域の前自律神経性(pre-autonomic)オキシトシンニューロンの活性化が心筋梗塞後の交感神経の活動を亢進させることを明らかにした。急性心筋梗塞が誘発するこうした異常な生理学的変化がオキシトシン受容体のアンタゴニストによって抑制されたことから、それが治療に役立つ可能性が示唆された。
Article: 細胞大のプローブによる齧歯類モデルでのドーパミン神経化学物質の安定的長期サブ秒モニタリング
Cellular-scale probes enable stable chronic subsecond monitoring of dopamine neurochemicals in a rodent model
doi: 10.1038/s42003-018-0147-y
H Schwerdtたちは今回、ラット脳内の化学的シグナル伝達を1年以上にわたってモニタリングすることができる極低侵襲性のプローブを発表した。そのプローブは直径がニューロンの細胞体1個分ほどであり、炎症や組織損傷をあまり引き起こさずに、化学的シグナル伝達のサブ秒の変動をモニタリングすることができる。
Article: SLOカリウムチャネルは線虫の早まった意思決定を抑制する
SLO potassium channels antagonize premature decision making in C. elegans
doi: 10.1038/s42003-018-0124-5
名古屋大学の青木一郎たちは、線虫C. elegansにおいて、K+チャネルと環状ヌクレオチド依存性チャネルが温度の変動に対する温度受容ニューロンの適応を調節することを明らかにした。この研究は、動物が環境変化への行動的順応に要する時間に関する理解を深めるものである。
Article: 神経前駆細胞をラットの脳脊髄液に移植すると宿主の脳に組み込まれた脳様組織が形成される
Neural precursor cells form integrated brain-like tissue when implanted into rat cerebrospinal fluid
doi: 10.1038/s42003-018-0113-8
胚の終脳や中脳に由来する初期の神経前駆細胞(NPC)をラットの脳室に移植すると脳様の組織が発生しうることが、N Pothayeeたちによって示された。皮質の切除によって形成され脳脊髄液で満たされた空洞に終脳由来のNPCを移植すると、宿主の皮質での脳組織形成も行われる。
Article: マウスの脳で発現する78種類のオーファンGPCRの発現マップが示す神経精神病学研究のトランスレーショナルリソース
Expression map of 78 brain-expressed mouse orphan GPCRs provides a translational resource for neuropsychiatric research
doi: 10.1038/s42003-018-0106-7
A Ehrlichたちは今回、マウス脳内のオーファンGPCR(oGPCR)転写物のin situハイブリダイゼーションによる詳細なマッピングの結果を示し、データマイニングのための公開リソースを提供している。特定の25種類のoGPCRはヒト脳でもマッピングが行われ、種間の相関性が高く神経精神疾患に関与している可能性のあるoGPCRが発見された。
2018年11月 代謝
Article: 母ラットへの抗生物質投与は仔ラットの細菌定着に影響を与えてその体重増加を抑制する
Antibiotic treatment of rat dams affects bacterial colonization and causes decreased weight gain in pups
doi: 10.1038/s42003-018-0140-5
M Tulstrupたちは今回、妊娠期間中の雌ラットに対する抗生物質投与が若齢期の腸内細菌定着を変化させ、成体期の低体重化を生じることを明らかにした。この作用は、食餌摂取量の減少および離乳期の満腹ホルモン発現量の増加と相関することが明らかになった。
Article: 血中グルコースレベルはインスリンシグナル伝達およびSLC5A11を介してショウジョウバエ幼虫の摂食と逆相関する
Circulating glucose levels inversely correlate with Drosophila larval feeding through insulin signaling and SLC5A11
doi: 10.1038/s42003-018-0109-4
R Ugrankarたちは、血リンパ中グルコースレベルが高いショウジョウバエ(Drosophila)の幼虫では摂食量が多くないが、トレハロースに関してはそのかぎりではないことを明らかにした。血リンパ中グルコースが脳内でインスリンシグナル伝達およびナトリウム・溶質共輸送体SLC5A11に情報を伝え、幼虫の食欲を抑制することが示唆された。
Article: 活性化プロテインCは糖尿病でプラークに付随するマクロファージのエピジェネティックに維持されたp66Shc発現を解除する
Activated protein C reverses epigenetically sustained p66Shc expression in plaque-associated macrophages in diabetes
doi: 10.1038/s42003-018-0108-5
血中グルコースレベルが正常に戻っても、糖尿病性のアテローム性動脈硬化症は改善されない。Shahzadたちは、この高血糖の記憶がプラークのマクロファージでエピジェネティックに維持されている酸化還元調節因子p66Shcの発現と関係しており、それが活性化プロテインCによって修正可能であることを明らかにした。
Article: 大規模なメタボロームの薬物プロファイリングの枠組みが補酵素Aの代謝と抗がん剤ジクロロ酢酸の毒性とを結びつける
A framework for large-scale metabolome drug profiling links coenzyme A metabolism to the toxicity of anti-cancer drug dichloroacetate
doi: 10.1038/s42003-018-0111-x
S Dubuisたちは、5種類の卵巣がん細胞に関して抗がん剤ジクロロ酢酸に対する動的な代謝適応を調べた。この研究から、補酵素Aの代謝がジクロロ酢酸の毒性発揮で果たす意外な役割が明らかになり、代謝的薬物プロファイリングの威力が示された。
Article: 代謝手術は腸で分泌される熱ショックタンパク質を減少させてインスリン抵抗性を改善する
Metabolic surgery improves insulin resistance through the reduction of gut-secreted heat shock proteins
doi: 10.1038/s42003-018-0069-8
G Angeliniたちは、高カロリー食が小腸からの熱ショックタンパク質の分泌を過剰に刺激してインスリン抵抗性を高めることを明らかにした。この研究は、肥満手術が腸で分泌される熱ショックタンパク質の血中レベルを低下させることによってインスリン抵抗性を改善することを示唆している。
2018年10月 感染症
Article: 金属レギュレーターFurのプロモーター結合機構と野兎病菌の毒性で果たす役割が構造機能研究で明らかにされた
Structural and functional studies of the metalloregulator Fur identify a promoter-binding mechanism and its role in Francisella tularensis virulence
doi: 10.1038/s42003-018-0095-6
J Pérardたちは、生理学的補因子Fe2+を伴う野兎病菌(Francisella tularensis)のFur(FtFur)の構造を明らかにし、FtFurが毒性に重要であることを示した。この研究は、プロモーターが引き起こす四量体分割の機構を明らかにしており、それは今後の抗生物質開発にとって重要な情報となる可能性がある。
Article: 鞭毛を介して分泌されるコレラ菌の新たな細胞毒素は脊椎動物と無脊椎動物のどちらにも作用する
Flagella-mediated secretion of a novel Vibrio cholera cytotoxin affecting both vertebrate and invertebrate hosts
doi: 10.1038/s42003-018-0065-z
M Dongreたちは、コレラ菌(Vibrio cholerae)の新たな細胞毒素を同定した。その毒性は鞭毛を介した分泌に依存する。このことは、細胞毒素の放出で鞭毛がもつ役割が、環境ストレスに接した細菌の生存と増殖を助長している可能性を示唆している。
Article: マクロライドによるクオラムセンシング阻害およびカルバペネムに対する緑膿菌のICETn43716385を介した耐性獲得
Acquisition of resistance to carbapenem and macrolide-mediated quorum sensing inhibition by Pseudomonas aeruginosa via ICETn43716385
doi: 10.1038/s42003-018-0064-0
Y Dingたちは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)にカルバペネム耐性を与える新たなICE(integrative and conjugative element)を発見した。カルバペネムは、感受性グラム陰性細菌の感染に対する最終治療薬である。この研究はまた、緑膿菌感染の毒性に対する治療が遺伝子の水平伝播によって脅かされうることを示している。
Article: 一過性の抗原抗体相互作用は保存されたマラリアエピトープの系統特異的な認識を仲介する
Transient antibody-antigen interactions mediate the strain-specific recognition of a conserved malaria epitope
doi: 10.1038/s42003-018-0063-1
B Krishnarjunaたちは、変性マラリア抗原MSP2内のエピトープのモノクローナル抗体による認識を複数の一過性の相互作用が仲介することを明らかにした。この結果は、その抗原の2つのアレル型に対する抗体の異なる親和性を説明する。
Article: Langereis血液型タンパク質ABCB6を欠く赤血球は熱帯熱マラリア原虫に対する抵抗性をもつ
Erythrocytes lacking the Langereis blood group protein ABCB6 are resistant to the malaria parasite Plasmodium falciparum
doi: 10.1038/s42003-018-0046-2
E Eganたちは、Langereis血液型抗原をコードする宿主のATP結合カセット輸送体ABCB6が熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の赤血球侵入を助長することを明らかにした。この研究は、Langereisヌルの無症候者がマラリアに強い可能性があることを示唆している。
2018年9月 植物科学
Article: 野生イネOryza granulataのde novoゲノムアセンブリから明らかになった急速なゲノム拡大と適応進化
De novo genome assembly of Oryza granulata reveals rapid genome expansion and adaptive evolution
doi: 10.1038/s42003-018-0089-4
Z Wu、D Fang、R Yangたちが、イネの野生種Oryza granulataのゲノムアセンブリを発表し、イネ属(Oryza)で起きた急速なゲノム拡大と進化について重要な知見を示している。最近のLTRレトロトランスポゾンの爆発的な増加が、種分化後のO. granulataゲノムの急激な大型化を生じたことがわかった。
Article: チラコイドの光防護の増強でイネの収量と草冠日射利用効率が高まる
Enhanced thylakoid photoprotection can increase yield and canopy radiation use efficiency in rice
doi: 10.1038/s42003-018-0026-6
S Hubbartたちは、光防護タンパク質遺伝子psbSの過剰発現が、イネの草冠レベルの日射利用効率と穀物収量を高めることを明らかにした。この結果は、光防護および集光過程を改変することによって稲作の収量が改善される可能性があることを示している。
Article: マイクロ流体デバイスによるライブイメージングで明らかになった柔軟なネットワークとしての葉緑体核様体
Chloroplast nucleoids as a transformable network revealed by live imaging with a microfluidic device
doi: 10.1038/s42003-018-0055-1
上村嘉誉たちは、ライブイメージング技術とマイクロ流体工学を組み合わせ、核様体内の葉緑体DNAの構成を研究した。研究チームは、分裂中の葉緑体の中でその構造体がネットワーク構造を形成することを明らかにし、細胞小器官の複製時にそれが分配される仕組みを提唱している。