Letter アポトーシスが起こらない場合の Trp53 変異マウスにおける腫瘍形成の抑制には染色体の安定性が重要である 2004年1月1日 Nature Genetics 36, 1 doi: 10.1038/ng1282 p53タンパク質は多数の上流のシグナルを統合しており、また、異なった複数の下流遺伝子を活性化することにより癌抑制因子として機能している。細胞レベルでは、p53はアポトーシス、細胞周期の停止および老化を引き起こす。ヒトの腫瘍でまれに認められるアミノ酸置換R175Pをもつp53変異体は、まったくアポトーシスを開始できないが、細胞周期の停止は引き起こす。自然発生の腫瘍形成におけるこれらの経路の機能的な重要性を調べるために、我々は、相同組換えを利用して、p53- R172Pの変異(ヒトR175P変異と同等のマウス変異)をもつマウスを作製した。この変異を2コピーとも遺伝的に受け継ぐマウス( Trp53 515C/515C )においては、 Trp53 欠損マウスの特徴である胸腺リンパ腫の早期発症がみられない。7か月齢で、 Trp53 欠損マウスの90%が死亡するが、 Trp53 515C/515C マウスの85%は生存しており腫瘍も発生しなかった。このことは、p53依存的なアポトーシスは、自然発生の腫瘍の早期発症の抑制には必要ではなかったことを示している。最終的に Trp53 515C/515C マウスで発症したリンパ腫と肉腫では、二倍体の染色体数が保持されていた。これは Trp53 欠損マウスの腫瘍および細胞で観察される異数性とは大いに異なっている。p53- R172P変異体がもつ、部分的な細胞周期の停止を引き起こすとともに染色体の安定性を保持する能力は、早期の腫瘍形成開始を抑制するために重要である。 Full text PDF 目次へ戻る