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T細胞性急性リンパ芽球性白血病における増幅されたエピソームでのNUP214ABL1への融合

Nature Genetics 36, 10 doi: 10.1038/ng1425

T細胞性急性リンパ芽球性白血病 (T‐ALL)においては、染色体転座による転写因子の制御異常が知られているが、タンパク質チロシンキナーゼの変異はきわめてまれにしか同定されていない。今回我々は、T‐ALL患者90人のうち5人 (5.6%)にみられたABL1の染色体外(エピソームの)増幅について述べる。この異常は従来の細胞遺伝学的解析では検出できなかったものである。分子生物学的解析により、染色体バンド9q34から500kbの部位が増幅される領域であることが明らかになった。そこには癌遺伝子であるABL1NUP214が含まれている。我々は癌におけるチロシンキナーゼ活性化について、これまでに報告されていないメカニズムを同定した。すなわち、エピソームの形成が結果としてNUP214ABL1の融合を引き起こすということである。我々は、ABL1増幅が認められる患者5人と、さらにT‐ALL患者85人のうちの5人(5.8%)およびT‐ALL細胞株22のうちの3つにおいて、NUP214‐ABL1転写産物を検出した。構成的にリン酸化されたチロシンキナーゼNUP214‐ABL1は、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブに感受性である。反復性のある潜在的なNUP214‐ABL1の再編成は、HOX発現の増加およびCDKN2Aの欠失に関連しており、T‐ALLの多段階発症と一致する。NUP214‐ABL1の発現は、イマチニブ処理が有効であったT‐ALL患者の新しいサブグループを定めるものである。

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