Article 腸チフスを引き起こすサルモネラ菌Salmonella entericaのヒトに限定された血清型であるパラチフスAおよびチフスにおけるゲノム退化の比較 2004年12月1日 Nature Genetics 36, 12 doi: 10.1038/ng1470 サルモネラ菌Salmonella entericaの血清型の中には、しばしば宿主領域の広いものがあり、そして、あるものは胃腸病と全身性疾患の両方を引き起こす。しかし、血清型のパラチフスAおよびチフスは、宿主がヒトに限定されており、全身性疾患のみを引き起こす。チフスが誕生したのは、ここ数千年の間と推定されている。パラチフスAゲノムは、その配列決定とマイクロアレイ解析から、チフスゲノムとの類似性が指摘されているが、チフスゲノムより新しい進化的起源をもつことが示唆されている。両ゲノムは、約4,400のタンパク質をコードする配列の中に、独自に多くの偽遺伝子(パラチフスAで173、チフスで約210)を蓄積している。これら2つの類似したゲノムが1つの類似した表現型へと進化的に最近収斂したことは、その遺伝子型に巧妙に反映されている。つまり、両方の血清型で退化した遺伝子は30だけなのである。とはいえ、この30遺伝子の中には、胃腸炎(これらの血清型では発症しないものであるが)に重要な遺伝子3つと、宿主機能を妨げるために通常宿主細胞内へ分泌されるサルモネラの移行性エフェクターの遺伝子4つが含まれている。同じ経路における(例えば、走化性や線毛の産生における)異なった遺伝子の変異によって、機能の喪失も起こっている。 Full text PDF 目次へ戻る