Article Lamr1遺伝子の機能しているレトロトランスポゾンがマウスの右室異形成の原因である 2004年2月1日 Nature Genetics 36, 2 doi: 10.1038/ng1294 不整脈源性右室異形成(ARVD)は、遺伝性の心筋症で若年性の突然死の原因となる。我々は、ラミニン受容体1(Lamr1)遺伝子の突然変異によって起こる、遺伝性の右室異形成(RVD)をともなうマウスの系統を発見した。この原因遺伝子座位は、RVDをともなうマウスにおいて転写されるイントロンのプロセシングを受けたレトロトランスポゾンを含んでいた。変異したLamr1を、正常のマウスに交配によって、または直接導入すると、RVDマウスにみられるのと同様にRVDになりやすかった。変異したLamr1を心筋細胞にin vitroで発現させると、クロマチン構造の変化をともなう早期細胞死が起こった。我々は、ヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)が、変異型LAMR1に特異的に結合することを発見した。HP1はヘテロクロマチン部位の動的調整因子であり、変異LAMR1タンパク質が転写調節の重要な段階を障害していることが示唆された。実際、変異LAMR1タンパク質が心筋細胞における遺伝子発現を特異的に変化させることがDNAチップ解析によってわかった。以上より、我々はLamr1レトロトランスポゾンがHP1と相互作用することにより、心筋細胞の変性を起こすと結論づけた。この機序がヒトにおいてもARVDの病因となっているかもしれないであろう。 Full text PDF 目次へ戻る