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Wip1ホスファターゼの不活化はp38MAPKを介するp16Ink4a-p19 Arf系路の活性化により乳腺の腫瘍形成を抑制する

Nature Genetics 36, 4 doi: 10.1038/ng1317

腫瘍抑制因子活性を調節することが癌治療に新しい可能性をもたらすかもしれない。本論文では、Wip1ホスファターゼをコードするPpm1d遺伝子を破壊すると、p38MAPKシグナル伝達を介してp53およびp16-p19系路が活性化され、癌遺伝子によるマウス胚性繊維芽細胞(MEF)のin vitro形質転換が抑制されることを示す。p16はInk4a、p19はARFとも呼ばれる。 Cdkn2a(p16およびp19をコードする)遺伝子の破壊により、Ppm1d完全欠損MEFが再び形質転換能をもつにいたったが、Trp53(p53をコードする)ではそうならなかった。in vivoにおいては、マウス乳癌ウイルス (MMTV)プロモーターにより作動する癌遺伝子Erbb2c-neuとも呼ばれる)あるいはHras1をもつマウスにおいて、Ppm1dを欠失させると、乳腺の癌化が抑制され、一方、メチル化によって誘導されるサイレンシングあるいは腫瘍の発生に関連したp38 MAPKの不活化よって、p16およびp19の発現が減少した。これらの結果から、p38MAPKを活性化させるWip1ホスファターゼの不活化あるいは減少により、Cdkn2a腫瘍抑制遺伝子座が調節され、腫瘍の発生が抑制されると結論できる。

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