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メラノサイト分化プログラムは腫瘍性形質転換後の転移を引き起こす素因となる

Nature Genetics 37, 10 doi: 10.1038/ng1634

メラノーマの悪性の臨床的挙動から、神経堤にあるメラノサイトの発生学的起源がその転移傾向に関係しているかもしれないことが示唆されている。本論文では、ヒトの初代培養のメラノサイトに、ある特定のセットの遺伝子を導入して形質転換させると、頻繁に複数の二次的部位に転移するメラノーマを形成することを示すが、ヒトの繊維芽細胞や上皮細胞に同一セットの遺伝子を導入して形質転換させても、ほとんど転移しない原発腫瘍を発生する。特筆すべきは、このメラノーマのもつ転移性が、メラノーマ患者で観察されるのと同様のものであることである。これらの観察は、メラノーマの転移傾向の一部は、解析した他の細胞タイプにはなく、メラノサイトにおいてのみ発現している系統特異的因子に起因していることを示す。ヒト母斑のマイクロアレイデータの解析から、神経堤細胞の分化と移動のマスター調節因子であるSlugの発現パターンは、発生過程での神経堤細胞移動に重要な他の遺伝子の発現と一致することを示す。また、Slugは形質転換したメラノーマ細胞の転移に必要である。これらの知見は、腫瘍性形質転換前に存在するメラノサイト特異的因子が、メラノーマ進行の制御にきわめて重要な役割を担いうることを示すものである。

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