Letter シロイヌナズナArabidopsis thalianaでは病原体誘導性でNADPH酸化酵素由来の活性酸素中間体が細胞死の拡大を抑制する 2005年10月1日 Nature Genetics 37, 10 doi: 10.1038/ng1639 植物の免疫応答は通常、感染部位およびその周囲での細胞外超酸化物の産生を伴う。植物では、病害抵抗性に関連するプログラム細胞死を細胞外の活性酸素中間体(ROI)が推進すると考えられていた(過敏感反応)。この酸化バーストに由来するROIは形質膜のNADPH酸化酵素が生成する。NADPH酸化酵素は、哺乳動物の好中球が感染時に作動させる呼吸酸化バーストをつかさどるタンパク質と近縁のgp91phoxによって形質膜に固定されている。シロイヌナズナの呼吸バースト酸化酵素(Atrboh)遺伝子を変異させると病原体誘導性のROI産生は行われなくなったが、過敏感反応への影響は限定的なものにとどまった。本研究では、Atrbohの機能が外因性のROIによって活性化されることを示す。意外にも、その後の酸化バーストでは、NADPH酸化酵素が活性化された部位の周辺の細胞で細胞死が抑制される。この細胞死には、植物の免疫系の活性化因子であるサリチル酸が必要である。このように、Atrbohタンパク質が生成するROIには、サリチル酸依存性の致死シグナルを打ち消す作用がある。今回の結果は、サリチル酸が感染部位から空間的に離れた細胞で細胞死を引き起こさずどのように防御的シグナル伝達を活性化するのかを理解するために重要である。 Full text PDF 目次へ戻る