Research Highlights

幹細胞の安定性

Nature Genetics 37, 6 doi: 10.1038/fake21

ヒト胚性幹細胞を病気の治療に利用する際に障害となりうる要素の1つについては、従来考えられていたほど心配しなくてもよいとする見方が、Nature Geneticsの6月号に掲載される論文に示されている。この論文の中で、ケンブリッジ大学(英国)のPeter Rugg-Gunnたちは、培養されたヒト幹細胞株をもとにして、一対の遺伝子の一方しか発現しない、いわゆる「インプリンティングされた」遺伝子のサンプリング研究を行い、ほとんどの場合で、遺伝子が正常な状態を保つことを報告している。

従来の研究では、マウス胚に由来する胚性幹細胞に含まれるインプリンティング遺伝子に発現パターンの変異が見られることが明らかになっていた。もし発現パターンが変異するような遺伝子を含む細胞が、病変細胞の代わりとして患者に移植されれば、細胞の生存能力や正常な機能に影響を及ぼす可能性があり、この点は、胚性幹細胞を病気の治療に用いる際の大きな障害になると懸念されていた。

Rugg-Gunnたちは、ヒトの6種類のインプリンティング遺伝子と3種類のインプリンティングに関わるゲノム領域を調べ、1種類を除く全ての場合で遺伝子発現パターンが正常に保たれていることを確認した。この論文では、発現パターンの変異がヒト胚性幹細胞に含まれる他の遺伝子で生じる可能性が指摘されているが、この研究成果からは、これまで予想されていた以上に高い安定性が示唆されていると言える。

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