肝臓での線維組織増殖の一因となっている遺伝子を同定したことを報告する研究論文が、Nature Geneticsの8月号に掲載される。慢性肝疾患が進行すると肝線維症を起こし、正常な組織が壊死して線維組織に置き換わる(瘢痕化)。慢性肝疾患は、米国での死因が第10位で、世界でも第16位である。慢性肝疾患の主たる原因の1つがC型肝炎ウイルス感染で、慢性C型肝炎患者の約25%は、感染から30年以内に肝線維症を発症している。
Frank Lammertたちは、最初に、マウスにおいて肝線維症と関連する遺伝子(補体因子C5をコードしている)を同定し、次いでC型肝炎ウイルス感染が陽性のヒト集団においてC5遺伝子と肝線維症の関連を確認した。補体因子C5は、これまで喘息感受性と関連があるとされていたが、炎症または組織再構築を促進することで肝臓での線維形成を引き起こす原因の1つにもなっている可能性がある。ただし、その正確な作用機序は明らかになっていない。マウスに補体因子C5の阻害剤を注入した実験では、肝線維症の規模が縮小した。この実験結果は、慢性C型肝炎と慢性肝疾患患者において肝線維症の規模を小さくするか、あるいは少なくとも進行を遅らせるような新たな薬剤標的候補を示唆している。