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分類不能型免疫不全症とIgA欠損症の患者から見つかったTACIの変異

Nature Genetics 37, 8 doi: 10.1038/ng1600

Nature Geneticsの8月号では、ヒト免疫性欠陥症候群の2種類の疾患の背後に新たな遺伝的要因が存在している証拠を示した2つの研究論文が掲載される。最も患者数の多い原発性免疫不全症である分類不能型免疫不全症(CVID)は、免疫系のさまざまな異常と全ての抗体型の不完全形成を特徴としている。CVIDと関連した症候群であるIgA欠損症(IgAD)は、IgA(免疫グロブリンA)抗体の選択的欠損を特徴としている。IgAは、口、気道と消化管の内側を覆っている粘膜の感染症を防ぐ役割がある。 フライブルク大学病院(ドイツ)のBodo Grimbacher たちは、同じ家族に属する複数のCVID患者と近親関係にない複数のCVID患者において、1つの変異遺伝子が同定されたことを報告している。またボストン小児病院(米国)のRaif Gehaたちの研究論文では、CVID患者とIgAD患者のいずれの集団においても、この変異遺伝子が見つかったことを報告している。この変異遺伝子は、TACIというタンパク質をコードしており、抗体を作り出す白血球で抗体型の切替えに関与している。 CVIDとIgADの臨床症状には、共通の部分と異なっている部分があるが、特に感染症と自己免疫疾患のリスク増加という特徴がある。CVIDとIgADの発症リスクには、遺伝的要因と環境要因が混ざり合って影響を与えていると考えられているが、CVIDの背後にある遺伝的原因については、ほとんど解明されていない。同じ家族にCVIDとIgADの患者がいるケースが多いため、この2つの症候群については、何らかの共通の遺伝的基盤があると、これまで長い間推測されていた。

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