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遺伝性非ポリポーシス大腸癌の家系における生殖細胞のMSH2にみられるエピジェネティックな遺伝性変異

Nature Genetics 38, 10 doi: 10.1038/ng1866

MLH1遺伝子のメチル化のような、生殖細胞におけるエピジェネティックなDNA変化(epimutation)は、ヒトにおいて遺伝性癌集積の一因となる可能性があるが、この変化の子孫への伝達はいまだに証明されていない。本論文では、生殖細胞におけるMSH2遺伝子の高度なメチル化が、対立遺伝子特異的かつモザイク状におこっており、それが3世代にわたって継続する遺伝様式を示す家系について報告する。しかもこの家系においては、DNAミスマッチ修復遺伝子に突然変異が認められない。生殖細胞においてメチル化が認められる同胞3人は大腸癌もしくは子宮体癌を早期に発症し、全員がマイクロサテライト不安定性とMSH2タンパク質の欠損を示している。各クローンに対して亜硫酸を使ったシークエンシングおよびピロシークエンシングにより塩基配列を決定すると、直腸粘膜および大腸癌組織では最も高く、白血球では最も低いというように、体組織ごとにメチル化の程度が異なることが明らかになった。こうした体組織でのメチル化の違いをともなう生殖細胞でのモザイク状のメチル化が、癌化の最初のヒットとして働く可能性があり、メンデル遺伝から逸脱し、また、従来の白血球を用いた遺伝子診断の方法では見落とされるおそれのある遺伝病の、遺伝の機序を示唆するものであることが期待される。

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