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FAT腫瘍抑制経路の詳細な描出

Nature Genetics 38, 10 doi: 10.1038/ng1887

プロカドヘリンであるDachsousとFatのショウジョウバエを用いた最近の研究から、両者はそれぞれ、組織の極性、成長、遺伝子発現に影響を与える細胞間シグナル伝達経路のリガンドおよび受容体として働くことが示唆されている。しかし、Fatの下流におけるシグナル伝達の基盤はまだ明らかになっていなかった。本論文では、ショウジョウバエの腫瘍抑制因子間の機能的な関係を明らかにするとともに、キナーゼであるDiscs overgrownとWartsが、Fatシグナル伝達経路の構成要素であることを同定したので報告する。fat, discs overgrown、そしてwartsは多くの組織で共通の下流遺伝子を調節している。遺伝学的実験により、discs overgrownはFat経路に属するdachsの上流で働くのに対し、wartsdachsの下流で働くことがわかった。Wartsタンパク質はDachsと共沈し、またWartsタンパク質のレベルはin vivofatdachsdiscs overgrownによる影響を受けており、これらの知見はWartsが下流に存在することを支持するものである。腫瘍抑制遺伝子であるMerlinexpandedhippo、salvador、そしてmob as tumor suppressorはまた、Fat経路の多くの表現型をともにするが、Wartsの働きに関してはその制御は共通していない。我々の結果は、ショウジョウバエの4つの腫瘍抑制因子グループを機能的に結びつけるものであり、受容体から転写因子にまでわたるFatシグナル伝達の基本的な枠組みを明らかにするものである。また、Wartsが成長制御にかかわる複数のシグナルを統合する役割を果たすことを示唆するものである。

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