Article PU.1のノックダウンにより誘導された白血病性幹細胞におけるJunファミリー転写因子の不可欠な役割 2006年11月1日 Nature Genetics 38, 11 doi: 10.1038/ng1898 転写因子PU.1(Sfpi1によってコードされる)のノックダウンにより、マウスに急性骨髄性白血病(AML)が引き起こされる。我々は、悪性形質転換前の転写の変化を明らかにするために、PU.1をノックダウンした前白血病性の造血幹細胞(HSC)(「PU.1ノックダウンHSC」とする)においてトランスクリプトームを検討した。発現が低下する標的としては、転写因子のc-JunおよびJunBを第一に考えた。前白血病細胞においてc-Junの発現を回復すると、PU.1ノックダウンによって始まる骨髄単球の分化阻害が回復した。白血病期にレンチウイルスを用いてJunBの発現を回復すると、白血病性の自己複製能の喪失が引き起こされた。また、この方法でのJunBの発現の回復は、白血病性のPU.1ノックダウン細胞を移植したNOD-SCIDマウスにおいては白血病を防いだ。AMLを罹患するヒトの検討から、PU.1とJunBの発現低下の間には相関があることが確認された。これらの結果から、PU.1ノックダウンHSCにおける白血病性形質転換前の転写パターンが明らかになるとともに、c-JunおよびJunBの発現レベルの低下が、分化を阻害し、自己複製を増加させることによって、PU.1ノックダウンの誘導するAMLの発症に寄与することが示された。したがって、HSCにおける異常な遺伝子発現の検討から、遺伝子制御の異常が白血病性幹細胞機能に不可欠である遺伝子群が同定でき、それを治療的介入の標的とできることがわかった。 Full text PDF 目次へ戻る