Letter 生殖細胞系列でのKRASの変異はヌーナン症候群を引き起こす 2006年3月1日 Nature Genetics 38, 3 doi: 10.1038/ng1748 ヌーナン症候群(MIM163950)は低身長、顔面異形および心臓の異常を特徴とする。SHP-2をコードするPTPN11のヘテロ接合性変異は、ヌーナン症候群の症例の約50%の原因である。SHP-2ホスファターゼは、活性化された受容体複合体から、Rasなどの下流のエフェクターまでのシグナルを中継する。我々は、ヌーナン症候群患者5人において、アミノ酸置換V14I、T58IあるいはD153Vをもたらす生殖細胞系列でのKRASのde novo変異と、ヌーナン症候群と重複する特徴をもつcardio-facio-cutaneous(心臓・顔・皮膚)症候群(MIM 115150)患者1人において、KRASのP34Rの置換を発見した。V14IおよびT58Iのアミノ酸置換をもつ組換え型K-Rasタンパク質は、本来備わっているGTP加水分解能の低下とGTPアーゼ活性化タンパク質に対する応答低下を示し、初代培養の造血系前駆細胞を増殖因子に対して過剰に応答させ、細胞系譜特異的な方法でシグナル伝達の調節を不能にする。これらの研究から、ヒトの疾患の原因として生殖細胞系列でのKRASの変異が実証され、ヌーナン症候群の範囲において認められる一連の発生学的異常は、主に、過剰に活性化したRasが原因であることが推測される。 Full text PDF 目次へ戻る