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Oct4とNanogの転写ネットワークはマウス胚性幹細胞の分化多能性を制御する

Nature Genetics 38, 4 doi: 10.1038/ng1760

Oct4とNanogは胚性幹細胞(ES細胞)の分化多能性および自己複製を維持するために必要な転写因子である。我々は、マウスES細胞ゲノムに対してChIP-PET(末端を対にしたダイタグを用いるクロマチン免疫沈降)法を用いて、これらの転写因子が結合する染色体上の位置を求めた。結合部位である可能性がきわめて高い領域として、Oct4について1083、Nanogについて3006を同定した。Oct4とNanogの候補結合位置を比較解析したところ、それらがもつ標的遺伝子の多くが重複しており、また、遺伝子に対する相対的な位置は両者で異なっていた。de novoモチーフ発見アルゴリズムによって、各転写因子のゲノムの結合部位への結合を仲介するシス作用性因子の存在が明らかになった。RNA干渉によってOct4とNanogを欠失させた条件下でマイクロアレイ発現プロファイリングをおこない、それにより、これらの因子が転写活性化能もしくは抑制能を有することが証明された。さらに、両転写因子に共通の、中核となる標的遺伝子群が、ES細胞を未分化状態に維持するために重要であることを示した。これらの知見から新たに明らかになった事実は、Oct4とNanogが、分化多能性、自己複製、ゲノム監視、細胞運命の決定をつかさどる、複雑な構成のカスケード経路を制御しているということである。

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