我々は最近、先天性甲状腺機能低下症、先天性緑内障、肝繊維症および多発性嚢胞腎をともなう新しい新生児糖尿病症候群について報告した。本論文では、この症候群が、最近同定された転写因子であるGLI similar 3をコードするGLIS3の変異によって引き起こされることを示す。我々は、この疾患が最初に認められた家系において、短縮型タンパク質をもたらすと予想されるフレームシフト変異を見いだした。また、この症候群の異型を示す他の2家系において、この遺伝子の5'側から11あるいは12のほとんどのエキソンに影響を与える欠失を患者がもつことを見いだした。膵臓や甲状腺における主要な転写産物の欠如(両家系で欠失が認められる)や、眼特異的な転写産物の欠如(1家系で欠失が認められる)、また、GLIS3転写産物のいくつかに発現が残ることは、この疾患の患者の臨床症状が変化に富むことの説明になるようである。GLIS3は発生の初期段階から膵臓において発現しており、膵臓組織の中ではβ細胞に最も高い発現が認められる。これらの結果は、膵β細胞の発生や、甲状腺、眼、肝臓および腎臓においてGLIS3が担う主要な役割を示すものである。