Letter 前立腺がんと関連する高い頻度の遺伝子多型 2006年6月1日 Nature Genetics 38, 6 doi: 10.1038/ng1808 一般集団において比較的多く見られる遺伝子マーカーの一つが、前立腺がん患者に相対的に高頻度で認められることがNature Geneticsの6月号に掲載される論文で報告される。これは、一般集団における前立腺がんの主たる遺伝的危険因子を同定した初めての研究と言える。 deCODE Genetics社(アイスランド・レイキャビク)のKari Stefanssonたちは、アイスランド、スウェーデン、米国で調査対象とした集団において、8番染色体上の1つのマーカーが前立腺がん患者に高頻度で見られることを明らかにしている。米国の集団にはヨーロッパ系アメリカ人の集団とアフリカ系アメリカ人の集団の双方が含まれている。ヨーロッパ系の人々における前立腺がんの約8%は、この遺伝子多型が原因となっている可能性がある。これら4つの調査対象集団において、この遺伝子マーカーは、悪性度の高い前立腺がんと有意に関連しているが、良性の前立腺肥大症とは関連していない。この結果は、この遺伝子マーカーが悪性前立腺がんのリスクを特異的に増加させることを示唆している。この前立腺がんリスクと関連した遺伝子多型については、特定の遺伝子との結びつきは断定されていないが、8番染色体上の近傍領域にいくつかの遺伝子候補が見つかっている。 前立腺がんは、発生率が増加しており、男性が診断されるがんの中では皮膚がんに次いで2番目に多いがんのタイプとなっている。発生率はアフリカ系アメリカ人が特に高く、死亡率もヨーロッパ系アメリカ人より高い。この前立腺がんリスクと関連した遺伝子多型の頻度は、アフリカ系アメリカ人がヨーロッパ系アメリカ人の4倍となっており、これが、前者において前立腺がんの発症リスクが高い原因の少なくとも一部となっている可能性が示唆されている。 Full text PDF 目次へ戻る