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全ゲノムスキャンによって明らかになった、副腎皮質過形成患者におけるホスホジエステラーゼ11A4をコードする遺伝子(PDE11A)の突然変異

Nature Genetics 38, 7 doi: 10.1038/ng1809

ホスホジエステラーゼ(PDE)は環状ヌクレオチドの濃度を調節する。サイクリックAMP(cAMP)シグナル伝達の亢進は、PRKAR1AもしくはGNASの変異に関連があるとされており、副腎皮質腫瘍やクッシング症候群(Cushing syndrome)を引き起こす。我々は、原因不明の副腎皮質過形成が見られる患者におけるクッシング症候群の遺伝的素因について検討した。副腎皮質腫瘍の責任遺伝子を含むゲノム全域に対してSNP解析を行なった。ヘテロ接合性の消失(LOH)などの解析によって明らかになった感受性遺伝子である可能性の最も高い領域は、2q31-2q35であった。我々は、3つの家系においてPDE11Aアイソフォーム4の遺伝子(PDE11A)の発現を妨害する突然変異を特定した。腫瘍組織においては、2q31-2q35のLOH、PDE11Aアイソフォーム4タンパク質の発現低下、環状ヌクレオチドレベルの上昇やcAMP応答性エレメント結合タンパク質(CREB)リン酸化の亢進が見られた。PDE11Aは、副腎皮質で発現され、タダラフィル(tadalafil)などのPDE阻害剤で部分的に阻害される、二重特異性を示すPDEをコードしており、生殖細胞系列においてPDE11Aが不活性化されると副腎皮質過形成が生じる。このことは、cAMPシグナル伝達の調節異常が内分泌腫瘍の原因となるという、新たな発癌機構を示唆するものである。

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