Letter

Mycによって活性化されたマイクロRNAクラスターによって腫瘍血管形成が増強される

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1855

ヒトの腺癌は一般にKRASMYC癌原遺伝子、TP53癌抑制遺伝子に変異をもつ。これら3つの遺伝的障害はすべて、潜在的に血管形成促進的である。すなわち、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を維持しているからである。しかし、p53を欠失したマウスの大腸細胞をKrasで形質転換すると、血管の少ない進行の遅い腫瘍を形成し、そこにMycをコードしたレトロウイルスをさらに形質導入すると、活発な血管形成と増殖の促進がみられた。また、VEGFのレベルはMycによっては影響を受けなかったが、新生血管形成の増大は、抗血管形成作用のあるトロンボスポンディン1(Tsp1)と、その関連タンパク質である結合組織増殖因子(CTGF)などの減少(ダウンレギュレーション)と相関していた。Tsp1とCTGFは、どちらもmiR-17-92マイクロRNAクラスターによって抑制される標的と予測されており、このマイクロRNAクラスターは、K-Rasとc-MYCが共発現している大腸細胞でその発現が亢進していた。実際、miR-17-92をそのアンチセンスである2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドによってノックダウンすると、Tsp1とCTGFの発現が一部回復する。さらに、Rasだけが発現している細胞を、miR-17-92をコードしているレトロウイルスで形質導入した細胞では、Tsp1とCTGFの量が減少した。注目すべきは、miR-17-92を形質導入された細胞はより大きな、一面に広がった腫瘍を形成したことである。これらの結果は、Mycによって誘導された非細胞自立的な腫瘍の形質におけるマイクロRNAの役割を証明するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度