Letter 筋緊張性ジストロフィーにおけるRNA毒性と心臓伝導障害の可逆的モデル 2006年9月1日 Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1857 成人で最もよく見られる筋ジストロフィーである筋緊張性ジストロフィー(DM1)は、筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ(DMPK)をコードする遺伝子の3' UTRにある(CTG)nの延長によって、「毒性のある」変異RNAが核内にとどめられ、RNA封入体の中でRNA結合タンパク質(MBNL1など)と相互作用することによって起こる。その毒素を除くことを目的とした治療が有効かどうかは不明である。この問題に取り組むため、我々は緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする誘導可能なRNA転写産物の一部に相当する、DMPK3' UTRを発現するトランスジェニックマウスを作製した。驚いたことに正常なDMPK3' UTR mRNAを過剰発現させたマウスは、明らかな核内封入体がないにもかかわらず筋緊張、心臓伝導異常、組織病理変化、RNAスプライシング障害などを含む筋緊張性ジストロフィーの心臓の特徴を再現性よく示した。しかしながら、骨格筋においてはDM1の患者でみられるようなCUG結合タンパク質(CUG-BP1)の増加が観察された。注目すべきことにこれらの効果は、導入遺伝子の発現を抑制することによって、成熟骨格筋と心筋のいずれにおいても正常に戻すことができた。本論文の結果は、筋緊張性ジストロフィーの治療戦略として、毒性のあるRNA分子の発現をなくしたり、抑制したりする方法の原理を生体ではじめて証明するものである。 Full text PDF 目次へ戻る