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テロメア:Cdkn1aが欠失すると、テロメアの機能に異常をもつマウスの幹細胞機能の亢進と延命が生じるが、癌化が進むことはない

Nature Genetics 39, 1 doi: 10.1038/ng1937

テロメアの短縮によって、細胞周期阻害因子p21(Cdkn1aによってコードされる。Cdkn1aCip1Waf1としても知られる)の発現量増大をはじめとするDNA損傷応答経路の活性化が起こり、ヒト細胞の増殖寿命に歯止めがかかる。テロメラーゼをコードしている遺伝子の変異によって生じるテロメア短縮は、ヒトやマウスにおいて臓器を維持する機能の低下や寿命の短縮と関係がある。テロメアの機能が正常でない条件下におけるp21の生体での機能は知られていない。本論文では、p21が欠失すると、テロメア機能に異常のあるテロメラーゼ欠損マウスの寿命が延びることを示す。p21の欠失によって、血球・リンパ球新生と小腸上皮の維持がテロメア機能の回復なしに亢進された。またp21の欠失によって、テロメア機能に異常のあるマウスの腸前駆細胞の増殖が回復し、造血幹細胞の再増殖能や自己複製能が高められた。こういったマウスでは、アポトーシス応答は完全なままであり、またp21欠失は染色体不安定性や癌化を促進していなかった。本研究成果は、テロメアの機能異常によって、臓器レベルの寿命を制限する可能性のあるp21に依存したチェックポイントが生体内で引き起こされるということの実験的証拠となる。

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