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血管内皮:Birc2(cIap1)は血管内皮細胞の健全性と血管の恒常性を調節する

Nature Genetics 39, 11 doi: 10.1038/ng.2007.8

血管壁が健康な状態にあることは、血管が安定に保たれ、臓器が正常に機能するために不可欠である。血管内皮細胞の生存とアポトーシスとの間に動的なバランスが取れていれば、その結果、血管発生および病的な血管新生の過程において血管壁は健康な状態に維持される。これらの過程を生体内で遺伝子レベルおよび分子レベルで調節する機序は、依然としてほとんど知られていない。本論文では、Birc2(cIap1としても知られる)が血管発生において内皮細胞の生存や血管の恒常性を維持するうえで必須であることを示す。正遺伝学的な手法によって、ゼブラフィッシュのbirc2ヌル突然変異体を同定した。この変異体は、内皮細胞の健全性が損なわれアポトーシスが生じているため、重篤な出血や血管退縮をきたしていた。遺伝子レベルや分子レベルでの解析から、Birc2が内皮細胞のTNF受容体複合体Iの形成を正に調節する結果、NF-κBの活性化が促進され、血管の健全性と安定性が維持されていることが明らかになった。Birc2が欠損している場合には、カスパーゼ8依存性アポトーシスが起こり、血管退縮が生じた。今回得られた知見は、Birc2とTNFシグナル伝達経路の構成因子が血管の健全性と内皮細胞の生存に関する重要な調節因子であることを特定するものであり、胚発生、再生、腫瘍形成において血管新生および血管の恒常性を制御する、さらなる標的経路を提示している。

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