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幹細胞:PTENを欠損した腸の幹細胞が腸のポリポーシスを発症させる

Nature Genetics 39, 2 doi: 10.1038/ng1928

腸のポリポーシスは、前癌状態の新生物であり、おもに腸の幹細胞(ISC)を含む陰窩の数の異常増加により生じる。マウスでは、腫瘍抑制因子であるPhosphatase and tensin homolog(PTEN)の広範囲にわたる欠失が、上皮と間質の両方の関与する過誤腫性腸ポリープを発生させる。我々はこのモデルを使用し、幹細胞とポリープおよび腫瘍形成との関係を明らかにした。PTENはISCの増殖率や数の制御に寄与し、PTENが欠損するとISCが過剰になる。PTEN欠損マウスで過剰なISCは、陰窩の新規形成と陰窩の分裂を開始させ、胎仔や新生仔の腸で陰窩の産生が繰り返し行われる。PTEN-Akt経路はおそらく、Wnt経路のエフェクターであるβ-カテニンの核局在の制御に寄与することによって、幹細胞の活性化を制御している。Aktはβ-カテニンのSer552をリン酸化し、その結果β-カテニンがISCの核に局在するようになる。我々の知見は、PTEN欠損ISCにおいて、Aktの活性化とβ-カテニンの核局在によりISCの過剰な増殖がもたらされ、それにより腸のポリポーシスが引き起こされることを示している。

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