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ヒト集団と遺伝子発現:ヒト集団間における遺伝子発現の差の原因となる共通の遺伝的変異

Nature Genetics 39, 2 doi: 10.1038/ng1955

DNA配列の変異は量的形質の個人差に寄与している。しかし、ヒトにおいて、特定のDNA配列の変異によって引き起こされる形質は、ごくわずかしか知られていない。私たちは、3つの主要なヒト集団に属する患者から得られた細胞を調べて、遺伝子発現の変化の特徴を同定した。量的な表現型が、ヨーロッパとアジアとのヒト集団間において、検定をおこなった4,197遺伝子のうち1,097の遺伝子で著しく異なっている。最も強くシス決定因子の証拠を表している表現型をみると、ほとんどの変異は、シス配列に結合する制御因子のもつ対立遺伝子頻度の違いによるものである。この結果は、集団間での特定の遺伝的変異が、表現型としての遺伝子発現の違いに見えることを示している。たとえば、糖尿病や心血管疾患のような多くの複雑な遺伝的疾患の有病率は、集団間で異なる。おそらく、このうちのいくつかが遺伝子発現のレベルの違いによる影響によるものだろう。今回の結果は、制御因子の多型における対立遺伝子頻度の違いも、ヒト集団間の複雑な疾患の有病率の違いの原因となっていることを示唆している。

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