Article 乳癌:プロテインチロシンホスファターゼ1Bが欠損するか阻害されると、ErbB2による乳腺腫瘍発生の進行が妨げられ、肺転移が起こらなくなる 2007年3月1日 Nature Genetics 39, 3 doi: 10.1038/ng1963 プロテインチロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の乳腺腫瘍発生における役割を遺伝学的および薬理学的なアプローチの両方を用いて検討した。現在までに、Erbb2の細胞外ドメインをコードしている領域に欠失型変異をもつトランスジェニックマウスNDL2(Neu deletion in extracellular domain 2)は、肺転移に移行する乳癌を発生することが明らかになっている。しかし、NDL2トランスジェニックマウスにおけるPTP1B活性が、Ptpn1欠損マウスとの交配、あるいはPTP1Bに特異的な阻害物質による処理で失われると、顕著な乳腺腫瘍の潜伏性と肺転移に対する抵抗性を示すようになる。一方、PTP1Bをマウスの乳腺で特異的に過剰発現させると、乳癌が自然発生する。ErbB2が引き起こす乳腺腫瘍発生のPTB1Bによる制御は、MAPキナーゼ(MAPK)とAktの両方の経路が抑制されることによって起こる。本研究成果は、乳癌の新規治療標的としてPTP1Bに注目する理論的根拠となるものである。 Full text PDF 目次へ戻る