Perspective 治療的クローニング:クローン胚の核の再プログラム化とその治療的クローニングにあたえる影響 2007年3月1日 Nature Genetics 39, 3 doi: 10.1038/ng1973 治療目的のクローニング、すなわち核移植(SCNT)によって患者の体細胞由来クローン胚盤胞から患者自身の胚性幹細胞(ntES細胞)を樹立することは、いろいろなヒト疾患の治療に役立つと考えられ、大いに期待される方法である。ntES細胞は、マウスとウシにおいて樹立されているが、これまでのところ、ヒトのntES細胞に関する確かな報告はない。今回我々は、遺伝子発現、DNAメチル化、クロマチンリモデリング、ゲノムインプリンティング、X染色体不活性化をはじめとする、SCNTによる核の再プログラム化に関する最近の論文について総説する。ntES細胞はクローン胚の内部細胞塊から樹立されるが、その内部細胞塊で発現する遺伝子の再プログラム化は、非常に効率よくおこるようである。生殖目的のクローニングでは、おそらく胚外細胞系統の異常がその成功率を低くしている主な原因であるが、ntES細胞の樹立では、この異常が影響を及ぼすことは考えられない。ヒトの治療目的のクローニングは達成可能であり、患者自身のntES細胞株の樹立は、再生医療の大きな発展につながる重要な研究であると我々は信じている。 Full text PDF 目次へ戻る