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ミトコンドリアと脳疾患:ミトコンドリアのアスパルチルtRNA合成酵素の不足は脳幹と脊髄の障害および乳酸値上昇をともなった白質脳症の原因となる
Nature Genetics 39, 4 doi: 10.1038/ng2013
脳幹と脊髄の障害および乳酸値上昇をともなった白質脳症(LBSL)は、近年、磁気共鳴撮影や磁気共鳴分光法によって観察される、きわめて特徴的な一連の異常にもとづいて定義されている。LBSLは常染色体劣性疾患で、ほとんどは幼児期に発症する。患者は緩徐進行性の小脳性運動失調、痙性、後索機能不全を発症し、場合によっては軽度の認知障害もしくは認知低下をともなう。我々はマイクロサテライトマーカーを用いてLBSL家系の連鎖地図作成をおこない、共通ハプロタイプを用いて範囲を狭め、1番染色体上の候補領域を見つけた。この候補領域に存在する遺伝子群の塩基配列を決定したところ、全部で30家系の患者で、ミトコンドリアのアスパルチルtRNA合成酵素をコードしているDARS2に存在する突然変異が明らかになった。変異タンパク質の酵素活性は低下していた。予想に反して、別の分析法で決定された患者由来の線維芽細胞およびリンパ芽球細胞のミトコンドリア複合体の活性は正常であった。