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乳癌:MMTV挿入変異誘発により、乳癌にかかわる遺伝子と遺伝子ファミリーおよびシグナル伝達経路を同定する
Nature Genetics 39, 6 doi: 10.1038/ng2034
レトロウイルスを用いた挿入突然変異誘発によるハイスループットスクリーニングによって、マウスの乳癌ウイルス(MMTV)に起因する乳癌を調べ、その結果、33カ所の共通挿入部位を見いだした。挿入部位をもつ遺伝子のうち、17の遺伝子は乳癌との関連が今回初めて見いだされ、13の遺伝子では癌との関連が初めて見いだされた。Wntファミリーや繊維芽細胞増殖因子(Fgf)ファミリーの構成遺伝子はしばしばMMTVにより標識されているが、今回、MMTV挿入部位を網羅的にスクリーニングすることにより、乳癌の新たな発癌遺伝子候補が明らかになった。これらの遺伝子のうちの1つの遺伝子Rspo3が、乳房上皮細胞のp53欠損株において過剰発現している癌遺伝子であることが確認された。癌遺伝子候補のヒトにおけるオーソログは、多くの場合、ヒト乳癌において脱制御されており、いくつかの腫瘍パラメータと関連している。MMTVで標識された全遺伝子をコンピュータ解析した結果、癌との関連が今まで知られていなかったいくつかの遺伝子ファミリーに癌との関連が見いだされ、これらのMMTV標識遺伝子が、おもに発生や増殖因子によるシグナル伝達に関連するタンパク質ドメインやシグナル伝達経路にきわめて高頻度に関与していることがわかった。MMTVおよびMoloneyマウス白血病ウイルスに起因する腫瘍で全標識遺伝子を比較したところ、両ウイルスは、別々のシグナル伝達経路で機能することが多く、たいていは異なる遺伝子を標的とすることが示された。