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筋芽細胞:進化上保存されている分子経路は昆虫および脊椎動物において筋芽細胞の融合を調節する

Nature Genetics 39, 6 doi: 10.1038/ng2055

骨格筋は、前駆細胞である筋芽細胞が多核筋線維へと細胞融合することによって生じる。脊椎動物では、筋形成に必須であるこのステップを制御する機構はほとんど明らかになっていない。本論文では、ショウジョウバエDrosophila melanogasterで筋芽細胞の融合を生じさせる受容体タンパク質のホモログ、Kirrelが、ゼブラフィッシュの筋前駆細胞の融合に必要であるという証拠を示す。発生途上の体節内部では、Kirrelの発現は速筋細胞系譜の構成細胞で融合能を示す筋芽細胞の膜に局在していた。空間を埋めるように並んだシンシチウム型(多核型)速筋線維を形成する野生型筋芽細胞とは異なり、Kirrelが欠損した筋芽細胞では融合能の顕著な低下がみられた。また、Racの阻害によっても、ゼブラフィッシュにおける速筋前駆細胞の融合が損なわれた。Racは、GTPase活性を示し、ショウジョウバエの融合シグナル経路において最も下流に存在する細胞内シグナル伝達因子である。ところがショウジョウバエの場合とは違い、ゼブラフィッシュでRacが恒常的に活性化されると、過剰に融合した巨大なシンチウムが形成された。このことは、細胞融合における数や極性の制御するという、このタンパク質のまったく新たな機能に光を当てるものである。これらの研究結果は、筋芽細胞の融合に対する遺伝子調節が進化の上でかなり高度に保存されていることを明らかにしている。

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