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トランスクリプトーム:RNA-DNAハイブリッドマッピングによる分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの動的トランスクリプト―ム

Nature Genetics 40, 8 doi: 10.1038/ng.196

新しいRNA-DNAハイブリッドマッピング法(HybMap)を使い、多様な生育条件における分裂酵母S. pombeの、DNA鎖を特定した高分解能トランスクリプト―ムを作成した。HybMap法では、高密度に敷きつめたDNAオリゴヌクレオチドタイリングマイクロアレイとハイブリッドを形成したRNA分子を検出するために、RNA-DNAハイブリッドに対する抗体を使っている。HybMap法は特に、強いシグナルから微弱なシグナルまで幅広く対応し、再現性にも優れ、それぞれの鎖に特異的なコード領域をもつRNA、コード領域のないRNA、構造としてのRNAや、さらにかけ離れた酵母種に保存された未知のRNAの検出に有効であった。とりわけ真正クロマチンゲノム(遺伝子間の部分も含み)はほとんどすべてが転写され、ヘテロクロマチンは遺伝子間の領域の転写を減衰させていることがわかった。また、生育条件に特異的な大量の非コード領域RNA、広範囲なアンチセンス鎖の転写、アンチセンス鎖の転写の新しい特徴、そして両方向への転写が引き起こされていることを見いだした。ついで、 HybMapのデータから、ゲノム全体にわたるRNAスプライシングの位置と効率に関する情報が得られた。さらに、セントロメア内のヘテロクロマチン領域にあるtRNA周辺の、それぞれの鎖に特異的な離ればなれにある転写領域も見つけた。これをもとに、生物の適応とトランスクリプト―ムの進化に関する新しい展開を議論したい。

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