Letter 免疫不全とミトコンドリア病:細網異形成症(無白血球症)はミトコンドリアのアデニル酸キナーゼ2をコードする遺伝子の変異によって引き起こされる 2009年1月1日 Nature Genetics 41, 1 doi: 10.1038/ng.265 ヒトの重症複合免疫不全症(SCID)は表現型にも遺伝子型にも異質性のある疾患である。細網異形成症は先天性SCIDの最重症型である。この疾患は、末梢血に顆粒球が存在せず、またリンパ球もほとんど完全に欠損していること、胸腺や二次リンパ器官の低形成、自然免疫機能や獲得免疫の体液性免疫機能および細胞性免疫機能の欠損を特徴とし、出生後数日以内に致死的な敗血症になる。細網異形成症の人の骨髄では、骨髄細胞の分化は前骨髄球段階で阻害されるが、一般に、赤血球および巨核球の成熟は正常である。これらの特徴は、造血幹細胞の異常ではなく、骨髄-リンパ球系細胞に固有の異常であることを示している。細網異形成症の劇的な臨床経過とその固有の血液学的表現型のため、この症候群の遺伝的基盤の解明に大きな興味がもたれている。本論文では、ミトコンドリアのエネルギー代謝酵素であるアデニル酸キナーゼ2(AK2)をコードする遺伝子が細網異形成症の人で変異していることを示す。また、ゼブラフィッシュのak2のノックダウンによって、白血球の発達異常が引き起こされることから、AK2の進化的に保存された役割が強調される。我々の結果は、白血球の分化におけるAK2選択性のin vivoでの証拠となる。これらの知見は、細網異形成症が、エネルギー代謝に関連する原因で引き起こされることからミトコンドリア病に分類されうる、最初のヒト免疫不全症候群の例であることを示唆するものである。 Full text PDF 目次へ戻る