Letter

テロメア:p53が欠損すると、テロメア不全老化マウスの染色体不安定性幹細胞が排除されない

Nature Genetics 41, 10 doi: 10.1038/ng.426

テロメアの機能不全は、ヒトの細胞の増殖能を制限し、活性型p53およびp21による生体の老化を引き起こす。p21の欠損によって、テロメア不全マウスの寿命は延長する。ところが、p53ノックアウトマウスにおいては早期に腫瘍が生じるため、テロメアに起因する老化でのp53の役割を直接解析することは困難であった。本論文では、p53のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、その機能的影響を解析した。腸特異的にp53を欠損したテロメア不全マウスでは、腫瘍形成が起こることなく、寿命が短縮した。p53の欠損の場合には、p21の欠損とは異なり、テロメア不全マウスにおける、染色体の安定性を欠く腸幹細胞の排除がみられなかった。そして、このような遺伝的に不安定な幹細胞が残存することで、安定性を欠いた染色体の蓄積、細胞死の発生増加、異常な細胞分化、早期の腸不全発症を招くような、腸管上皮の再生が引き起こされた。今回の研究成果は、p53に依存した機序によって遺伝的に不安定な幹細胞が排除される結果、テロメア不全による組織破壊が回避されることを、臓器システムにおいて実験的に証明した最初のものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度