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腫瘍:in vivo RNAiスクリーニングによって、アクチン動態の制御タンパク質がリンパ腫への進展の重要決定因子として同定された

Nature Genetics 41, 10 doi: 10.1038/ng.451

マウスを実験モデルとすることで、がんの進展や腫瘍の生物学的特性に対する理解は顕著に進むようになった。しかしこのようなモデルマウスは、標的分子にバイアスのかからない遺伝子実験が可能な、簡便なシステムとしては、その有効性に限界がある。本論文では、がんモデルマウスに対して機能喪失を指標としたスクリーニングを行った結果について報告する。具体的には、移植可能なEμ-mycリンパ腫細胞を注射したマウスに対して、shRNAライブラリーを遺伝子導入した。この方法によって、単一のがんのマウスにおいて1,000近くの遺伝子の発現抑制をスクリーニングすることが可能となった。その結果、アクチンの動態や細胞の運動性を制御するタンパク質が、in vivoのリンパ腫細胞のホメオスタシスで中心的な役割を果たすことが判明した。機能的な検証を行い、このようなタンパク質が間違いなく、リンパ腫に対する薬剤標的であることを確認した。さらに、上記の標的タンパク質のうち、Rac2およびツインフィリン(twinfilin)という2つのタンパク質の発現を抑制すると、最先端の化学療法薬であるビンクリスチン(vincristine)の作用の増強がみられた。このことは、血液悪性疾患における、細胞の運動性と腫瘍の再発との非常に重要な関係を示唆するものであった。

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