Article 幹細胞:成体肝臓・膵外分泌・腸におけるSox9陽性前駆細胞領域からの持続的細胞供給 2011年1月1日 Nature Genetics 43, 1 doi: 10.1038/ng.722 肝臓と膵臓外分泌では、それぞれの機能単位(肝細胞板と膵腺房)が、枝状に張り巡らされた管組織に連結しているという解剖学的構造が共通している。本論文では、胆管および膵管の上皮細胞全体にわたってSox9が発現しており、それらは腸の幹細胞領域に切れ目なくつながっていることを示した。Creを用いた細胞系譜追跡法によって、成体の腸細胞、肝細胞、膵腺房細胞が、Sox9発現前駆細胞から生理的条件下で供給されていることが判明した。この細胞系譜追跡法と肝障害モデルを組み合わせることで、Sox9陽性の前駆細胞が肝再生にも関係していることが明らかになった。また、胎生期のSox9陽性膵細胞は全種類の膵成熟細胞に分化するが、膵内分泌細胞への分化能は出生後短期間で消失する。この消失のタイミングは、内分泌細胞が膵管上皮列から離れ、ランゲルハンス島を形成する時期に一致している。さらに、胎生期肝臓では前駆細胞として働く細胞種が、胆管の発生に合わせてSox9陰性(肝芽細胞)からSox9陽性前駆細胞へと切り替わることを観察した。今回の研究結果から、内胚葉由来臓器における組織構造とその恒常性維持機構は相互依存していることが示唆され、そこではSox9発現が前駆細胞状態と関連していると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る