Letter がんの糖代謝:ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼは糖分解 の流れを変えてがん化に寄与する 2011年9月1日 Nature Genetics 43, 9 doi: 10.1038/ng.890 大部分の腫瘍は乳酸生成に向かう糖代謝の亢進を示しているが、グルコースから出発する代謝系のどの程度が代替経路に向けられているかはよく分かっていない。本報告では、同位体標識を用いたメタボローム解析で、がん細胞のあるものでは糖分解に由来する炭素のかなり高い割合がホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)の働きでセリンやグリシン代謝に割り当てられていることを見つけた。ヒトのがんの分析では、メラノーマで最もよく見つかる局所的なコピー数増加のゲノム領域で、PHGDHがしばしば増幅されていることがわかった。PHGDH発現を抑制すると、増幅されている細胞株の増殖が阻害された。PHGDH発現の増加は乳がんのサブタイプでも見られ、乳腺上皮細胞でのPHGDHの異所性発現は腺房の形態形成を阻害し、細胞の悪性転化を起こしやすくなるような表現型への変化を誘導した。我々の知見は、糖分解経路を特定の代替経路へ変更することが腫瘍発生の過程で選択されうることにより、ヒトがんの発生に寄与している可能性があることを示している。 Full text PDF 目次へ戻る