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肝細胞がん:B型肝炎ウイルスが関係する肝細胞がんのエキソーム塩基配列決定
Nature Genetics 44, 10 doi: 10.1038/ng.2391
肝細胞がん(HCC)は世界規模で最も頻度の高いがんの1つであり、肝周辺の組織や少し離れた組織に転移し、浸潤する傾向を示す。HCCの発生には複数のリスク因子が関係している。例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染があり、中国では特に多くみられる。本論文では、エキソーム塩基配列決定を行い、肝内転移である門脈腫瘍栓(PVTT)の形成を伴うHBV陽性HCC患者10人において体細胞変異を同定した。C:G>A:TおよびT:A>A:Tの両方のトランスバージョン(異種塩基置換)が、331の非サイレント変異において高い頻度で見つかった。注目すべきは、HBVが発症に関係しているHCC由来の検体110のうち14検体(13%)において、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成タンパク質をコードしているARID1Aに変異が生じている点である。さらに、RNA干渉を行うことで、変異が生じていることが確認された91の遺伝子の細胞生存における役割を調べた。その結果、これらの遺伝子のうちVCAM1やCDK14をはじめとする7つの遺伝子によって、HCC細胞に増殖能および浸潤能が付与される可能性が示唆された。本研究は、進行したHCCへの寄与が大きいと考えられる体細胞変異について包括的な知見を提供するものである。