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ALS:RNA投げ縄構造解除酵素の阻害はALSの疾患モデルにおいてTDP-43の毒性を抑制する
Nature Genetics 44, 12 doi: 10.1038/ng.2434
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主として運動ニューロンが障害される深刻な神経変性疾患である。TDP-43をコードする遺伝子の変異は、ALSのいくつかの病型の原因であり、また、大部分のALS患者の変性ニューロンでは、TDP-43の凝集塊が細胞質に蓄積する。したがって、細胞質のTDP-43凝集塊の毒性を標的とすることを目的とした戦略は有効である可能性がある。本論文では、酵母におけるTDP-43の毒性を抑制する因子の同定を目的とした、機能喪失によるゲノムワイドなスクリーニング2つの結果について報告する。TDP-43の毒性の最も強力な抑制因子はDBR1〔RNA投げ縄構造解除酵素(lariat debranching enzyme)をコードする〕の欠失であった。我々は、Dbr1の酵素活性がない場合に、イントロン由来のRNAの投げ縄構造が細胞質に蓄積し、それがデコイとして機能してTDP-43を隔離し、不可欠な細胞内RNAやRNA結合タンパク質へのTDP-43の阻害を防ぐと考えられることを示す。ヒトの神経細胞株あるいはラットの初代培養ニューロンにおけるDbr1のノックダウンも、TDP-43の毒性からの救済に十分である。我々の知見は、TDP-43が介する細胞毒性について知るうえでの手がかりとなり、Dbr1活性の低下がALSの治療アプローチになる可能性を示唆している。