Letter

TGF-β:TGFB2の機能喪失変異によって胸部大動脈瘤の症状を呈するようになる

Nature Genetics 44, 8 doi: 10.1038/ng.2349

ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome:LDS)は、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-βシグナル伝達の過剰な活性化によって組織が示す特徴を伴うが、多くの場合は、TGF-β受容体のサブユニットもしくはSMAD3などの、TGF-βシグナル伝達における正のエフェクターをコードしている遺伝子群に生じたさまざまな変異によって引き起こされる。このことは、この疾患の発症機序に関して議論を生じさせている。本論文では、リガンドであるTGF-β2をコードしている遺伝子そのものに生じた各種の変異や欠失のうち、LDSスペクトラムに含まれる症状を引き起こすものについて報告し、こういった患者由来の大動脈組織においてTGF-βシグナル伝達が亢進していることを明らかにした。さらに、 Tgfb2+/−ハプロ不全マウスにおいては、大動脈根瘤が形成され、標準的および標準的でないTGF-βシグナル伝達が亢進している生化学的な証拠が認められた。マルファン症候群(MFS)の原因対立遺伝子(Fbn1C1039G/+)とTgfb2ハプロ不全との両方を保持するマウスでは、TGF-βシグナル伝達の亢進と、TGF-β2発現の正常化およびTGF-β1の高発現に関係した症状の悪化が観察された。まとめると、上記の結果は、TGF-β影響下にある血管障害の発症原因に、補完的な傍分泌や自己分泌の機構が寄与しているという仮説を裏付けるものである。

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