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白血病:Blk経路が果たす、慢性骨髄性白血病幹細胞における発がん抑制因子としての機能

Nature Genetics 44, 8 doi: 10.1038/ng.2350

がんの治療方針の1つは、がんの幹細胞(CSC)を特異的に、それに対応する正常幹細胞を害することなく、根絶することである。この方法がうまく機能するかどうかは、CSCの機能だけを調節している経路が分子レベルで解明されるか否かにかかっている。本論文では、BCR-ABL形成により発症する慢性骨髄性白血病(CML)をCSCの疾患モデルとして、CMLマウスの白血病幹細胞(LSC)においては、BCR-ABLがc-Mycを介してBlk遺伝子の発現を抑制していること、そして、BlkはLSCにおいてがん抑制因子として機能しているが、健常な造血系幹細胞(HSC)すなわち造血には、影響を及ぼさないことを示した。Blkは、上流に位置する調節因子であるPax5と下流エフェクターのp27を含む経路によって、LSCの機能を低減させて抑えていた。このBlk経路が阻害されるとCMLの発症は早まり、それに対して、Blk経路が過剰に活性化されると発がんは遅くなった。さらに、BLKは、ヒトのCML幹細胞の増殖に対して、阻害効果を示した。今回の結果は、LSCを選択的に標的とする治療の実現可能性を示すものである。このような治療法は、他のがんに対しても適用できるはずである。

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